リサイクル親父の日記

第732話 気持ちは分かるが、高くは買えません、リサイクルショップ仙台の親父はこれが精一杯・・

2009/09/06

仙台市泉区という場所で高校野球で有名な東北高校のある方面から買取依頼があった。
郊外の住宅地域で碁盤の目状に整然と区画整理されているので、ナビでも直ぐに分かった。
メイン道路から少し入った道路沿い、一戸建てのばかりの中にプレハブの事務所は逆に分かりやすかった。

10坪ほどの建物に入るなり男は質問してきた。
「どうだい全部新しいからさ、いくらで買取する?」。
俺は何とも言えずに、未だ検品もしてないのにそんな質問するのか、と腹が立った。

「何社が見積したんでしょ、どうでしたか?」と男の様子を探った。
顔をキリッと怒りを露わにして答えたのだ。
「そりゃ酷いものだよ、話にもなりゃしない、10万円にも遥かに届かないから・・・頭に来ちゃってさ」。

部屋を見渡すと、楕円形の組立式会議テーブルが部屋を大きく占領していて、隅にスチール書庫が数台、木製机など程度である。
確かに物は新しく買って半年しか経っていなかったと思われた。
しかし、3流メーカー製だし全体の数が少ない。

俺は話からして、見積をしてもとても彼の希望に添えないし、逆切れされるの嫌だった。
「新品で買い揃えれば相当な額だったでしょうが、ウチも高くは買えませんが・・社長さんの希望金額を教えてください、それで判断させてもらいますから」。
「そんなことは言えないよ、あんたの見積もりを言ってくれ!」と強気である。

そんなやり取りを数回繰り返してから、俺も決断した。
「この大きなテーブルはいりませんから、それ以外をX万円で買取します」。
「何で、どうしてテーブルがいらないんだ?それが高かったんだぞ」と大きな疑問を発した。

「売れ難いんです、それに場所をとるので店では邪魔というかスペースの無駄になりますから・・」。
暫し考え込んでから彼は意を決して念押ししてきた。
「するとあんたはテーブル以外でX万円で買取するんだね、分かった、もう2社頼んでいるから夕方に連絡するよ」。

俺は事務所を出て車に乗った。
俺の見積額はテーブルを除いたが先の他社より低い額だったから、普通に考えれば絶対に受注できないのだ。
だから、俺は今回の件はガソリンの無駄使いをしたんだと諦めていた。

やはり夕方には電話は無いし、晩酌を終えた頃にもない。
ほろ酔い加減でベッドでテレビを見ていたら突然ケータイが鳴った。
夜10時過ぎのケータイは何事が起きたかと思うし、悪い連絡ではないかと心配になった。

男は「あんたとこに頼むわ、明後日取りに来て」だってさ。
俺はこんな感じで仕事をしている男を疑う、だから結局開業間もなく締めることになったのだろうと感じた。
話が滅茶苦茶だから、ずるく演じては誰からも信用は得られないだろうね。