リサイクル親父の日記

第748話 しかし、欠けが大きくて・・・仙台リサイクル親父は買う勇気が出ない

2009/09/22

半年以上も前に来たことがあって少し見覚えがあったのだが、直ぐには思い出せなかった。
段ボール1箱を抱えて店に入ろうとしていた、外にいた俺は危なっかしい姿に手を貸して店に入った。
中年の婦人が売りに来たのだが、どうやら焼き物の中皿と茶碗だ。

だんだん思い出してきた。
その時は、古い物の買取について色々と質問をしてきたのだ。
例えば、売り値の何割で買ってくれるのか?、しかし、これは企業秘密ではないが説明し難い問題だ。

俺は売り値から逆算して買取する訳でもないし、逆算しない訳でもない。
物を売るということが状況により変わるから、速く売れる物は割合的は高く買ってもイイ。
しかし、売れるまで長期間かかるとか、何時売れるか分からない物は低い割合しか出せない。

彼女は古くから続いている地主に嫁いで何十年にもなる。
何不自由なく生活しているが、自分の小遣いが足りなくて困っている贅沢な悩みを持っていた。
それは浪費癖がついてしまっていて、欲しい物を買う、やりたいことをやるというのに小遣いが足りなくなるらしい。

旧家に昔からある物、古い皿などを持ちだして売り捌いて小遣いを作っていたのだ。 
俺の店に持ち込んできたのは初めてだが、以前には仙台市内の骨董屋さんを渡り歩いていたのだ。
今回満ち込んできた物は顔見知りの店では買わなかったようで、仕方なくて俺の店に持って来たようだ。

20枚のなます皿が木箱に入っている。
江戸後期から明治初めころの中皿だが、1枚を手に取ってみると、ソゲやひび割れが見つかった。
もう1枚取り出したが同様だった、それではともう1枚、しかし、皆同様にキズがついていた。

実用品として日常使いをしていたのでキズはあってもしょうがないけれど・・・
「どうですか?相当古い物でしょ?」と聞いてきた。
「ええ、それなりに時代がありますね」と俺は答えた。

その答えを聞いて彼女は自信を持ったようだ。
「幾らで買ってもらえますか?お高く買ってちょうだい」と高飛車になってきた。
「・・う~ん、これはちょっと、状態がいまいちで・・・」と査定を言うのをためらっていた。

すると彼女は方手を広げて「5」を示したのだろうが、それが5千円なのか5万円なのか・・・
欲張りな彼女である、5千円の筈がない、5万円だろうと察しがついたけど・・・
俺は遠慮気味に「申し訳ないですが、俺は査定できないですね、状態が状態なので・・」。

すると、プイと態度が変わった。
「何処に行ってもダメ、ダメって・・誰も分からないんだから・・まったく!」。
言動が180度も変わってしまった。