2009/10/30
若い男が二人連れで来たが、若いと言っても30代だろう。
二人とも髪が長めで、一見若いがよく見るとそれなりの歳だと思えた。
「買取して欲しいんですが、今日できないっすか?」と突然の申し入れだった。
自転車2台、コタツ、ガステーブル、フライパンと統一性が無いのだった。
普段俺の店は暇だから、今日も暇だから、直ぐに出張に出るのは問題はなかった。
場所は店から車で10分程度だから、気になるのは物の状態である。
「自転車は今、乗ってきました・・・他は1年前に買ったんですけど・・・」。
自転車は数年前の物だが故障もないので買取することにした。
だから、トラックに3人で乗って、かれのアパートに向かったのだった。
「引越しかい?随分、忙しいんだね?」と聞いた。
「1週間前に決まって、さっきまで仕事してて、これから片付けないと、明日出発なんで・・・」。
話の内容が取りとめないようでよく理解できない。
「派遣でもやってるの?」と直接的に聞いた。
「ウン、それで今度関東に行くんですよ、でも、助かったですよ、買取してもらえるんで・・」。
「もし、買取できなかったら、どうするつもりだったの?」。
「親にでも頼もうかと思ってました」。
「親って?仙台に居るの?」。
「岩手です、だから、困ってたんです」。
俺は「なぬっ?」と怒りが込み上げてきたから抑えきらなくなった。
「もういい歳だから、そんなことで親を当てするなよ、何でも自分でやらないとダメだろ」。
「・・そ、そうですねぇ~」と尻すぼみの声になった。
1か月前に仙台市中心部のビルの一室で派遣会社撤退の事務所什器の買取をした。
引取に立ち会った社員は、派遣に集める労働者を大変バカにしていたのだった。
ピンはねの道具としか考えていない言動に俺は怒りを感じたのだ。
「派遣会社か何か知らないが、仕事も自分で見つけるとかできないの」と続けてしまった。
「・・俺ら、おじさんみたいにできないっすよ、工場がいいんですよ」。
「だって流れ作業だろ?同じことの繰り返しで飽きないの?」。
「そんなことないっすよ、真剣にやらないと付いていけないですよ、でも、その方が良いんです」。
妙に自信と確信に満ちた言葉に俺はこれ以上言えなくなった。
「そうか、そんな考えや生き方もあるんだね」。