2009/11/01
その日は小さな買取と見積が重なっていた。
小さな買取は買取金額が小さいだけで、実は手間は相当かかったのだ。
置物と飾り物に雑貨類だから、物の始末が面倒だし、車に積み込むのも気を付けないとならないから。
その後も、見積りのお客さんは迷うばかりで結論が出ないからもどかしさは頂点に達したのだ。
口癖的に「これは幾らですか?」の連発と「どうしようかしら?」の連発。
メモっていた俺も用紙にグチャグチャと記入していたから、そして、結論が出ずにペンディングばかりだから自分で書いたが分からなくなってしまった。
今日は細々した事が多い割に果実は小さいなぁ、と思いながら店に戻った。
常連さんがカウンターに見えたから、近づきながら挨拶をした。
俺の顔を見ると常連さんが言った、「96歳のハイだって・・・」。
意味が分からず俺はキョトンとしてしまったのだが、「96歳の・・・」と2~3回繰り返して訴えている。
頭の中に?マークがたくさん並び出るが、イイ常連さんなので失礼が無いように聞いた。
「・・あの~どういうことですか?96歳のハイってどういう意味ですか?」。
興奮している常連さんは普段は落ち着いているのだが、今は一刻も早く俺にそれを伝えたいらしい。
「家で孫と遊んでいたら、息が上がって「ゼイ、ゼイ」してたらしいんだ・・・
息子が医者に行って診てもらえって言うから、近所の医者に行ったんだ・・・
そしたら、俺の肺が96歳に相当するんだって、肺の機能が低下しているんだって・・・」
「そうですか?そんなに低いんですか?お身体は大丈夫ですか?」。
「肺気腫だそうだ・・タバコは即止めたが・・・禁煙ガムにしたんだ」とガムをムシャクシャ噛んでいる。
突然、想像もできない事を聞いた場合にはパニクるものだ。
「96歳の肺」なんて想像はできないから、でも、機能低下で常連さんの健康が本当に心配になった。
「機能回復は難しいみたい、これ以上進まないようにするだけだってさ・・」ガムをクシャクシャしてる。
ヘビースモーカーとして50年以上も吸ってきていた。
禁煙ガムも半端じゃないらしく、今度はガムの影響で胃が調子悪いらしい。
「胃が調子悪いよ、ガムばっかり噛むからさ・・・どうもこうもならんな・・・」ムシャムシャ。
常連さんの話を聞いていて俺も思い当たる節があった。
ヘビースモーカーとしては同様だし、今は止める気はないから先々が・・・