リサイクル親父の日記

第804話 宮城県観光案内までやっちゃうよ、仙台リサイクルショップおやじが

2009/11/21

最初に店に来たのがちょうど1年前だったと思う。
他県ナンバーの乗用車だし、言葉使いが少し違うから、鈍感な俺でも分かった。
暫し店内を物色していたが、冷蔵庫に洗濯機など数点をまとめて買ってくれた。

配達先が仙台市の隣の市で、その駅前の賃貸マンションで、その日は北風が強いので記憶に残っている。
10階建ての7階の広いワンルームだから見晴らしがとても良くて、太平洋が遠望できるのだった。
その日は配達を済ませてまっしぐらに店に戻ったので、単身赴任らしいとは思ったけど用事以外に話はほとんどしなかったんだ。

翌週末に再度現れて、今度は小型家具に最小限の調理道具に食器を買ってくれた。
1点づつレジカウンターに運んでは物色に店内に戻るを繰り返すので、言葉を交わすのが多くなったのだ。
そしてコーヒーを淹れてあげたので話は盛り上がるようになってしまった。

その後は毎週毎来てくれて急接近なのだが、時々、仙台の街の場所について道順を聞いてくるようになった。
昨日は仙台のアウトレットモールの場所と様子を聞かれた。
イベントホールや行事についても聞かれるが、俺には半分程度しか答えられないのだ。

でも仙台以外の場所、松島や塩釜、多賀城に石巻、蔵王に鳴子、気仙沼や作並温泉など、たくさん聞いてくるんだ。
その質問に答えている時に、俺が意外に宮城県のことを知っていると気づいたんだ。
観光案内には載っていない情報を地元の人間だから知っていて当たり前でもあるが・・・

パンフレット的にではなくて現在の動向を絡めて説明したり、街の変遷を交えて解説したりできるんだ。
彼はそんな話をする俺に対して大きな信頼を持ってくれたようだ。
次々と話は広がり、最近は家族や子供のこと、会社の内容や仕事のこと、政治や経済などと際限が無いほどだ。

異郷の地に単身赴任はよくあることだけど、旅の恥はかき捨て的な生活もあるかも知れない。
ここは終生の棲みかではないから、いわば仮の生活である。
家族には仕送りも必要だから、彼は少ない小遣いの中で生活を最大限にエンジョイする方法としてリサイクルショップを活用する。

例えば、俺の店に欲しい物や探し物がなければ、俺は別の同業の店を紹介したりもする。
ゴルフに釣り、スキーの登山となると、俺の店には無い物がほとんどだったりもするからね。
彼の人生において、仙台という場所が記憶に残るだろうし、お互いに良い思い出になればそれでイイではないか。

宮城県境の彼の勤める大きな工場に事務機を配達したことがあった。
工場が数棟、敷地内も整然としているし整理整頓が行き届いていた。
制服に身を包んだ彼は会社の幹部である、そして、従業員から大変尊厳を受けているのが窺えた。