リサイクル親父の日記

第805話 記憶は遠くなりけり・・・俺じゃないよ、仙台リサイクルショップ親父

2009/11/22

店の近くに住む住人だったが、午後の昼下がり比較的お客さんの多くいる時間帯だ。
その日はちょこちょこと持ち込みの買取もあり、買うお客もいて、常連さんも陣取っていた。
レジカウンターの前は俺の店にしては輻輳気味だった。

お爺さんがレジの前に来て、「家の冷蔵庫、買取してよ」と申し入れしてきた。
忙しなくお客さんをこなしていたが、??とお爺さんを見た。
「大きい奴だな、未だ使えるし、買取してくれ」と他のお客は無視して言いよって来た。

「そうですか、ところで、何年前の物ですか?年式によりますが・・・」と聞いた。
少し考え込んでいたが直ぐに答える、「う~ん、6~7年前かな?大きいんだ」。
疑問が深まったから、「どうして使わなくなったの?冷蔵庫は必要じゃないの?」と理由を聞いた。

「息子が古いから新しい物を送ってきてくれたんだよ、だから要らなくなったんだ、邪魔でしょうがないし・・」。
お爺さんの息子であれば、40~50代の人だろうし、親を心配して新品冷蔵庫を贈るのか?
「今から家に取りに来てくれよ?邪魔で・・・」と促すけど、少し店は忙しいから躊躇した。

そして、「あのね、冷蔵庫の製造年を調べて電話をください、それで判断しますから、古いと引取りできないから」。
それでも分かってくれないのだ、そして、「洗濯機もあるよ、こっちの方が少し古いかな」と言うのだった。
俺は心配が倍増したので、「・・まあ、帰ってから確かめて電話ね、良ければ直ぐに行くから」。

お爺さんは俺が言ったことを分かってくれて帰ったようだった。
お客さんは増えたり減ったりして一日中なんとかソコソコで、すっかりそのお爺さんを忘れていた。
夕方、お爺さんから電話があった、「92年って書いてあるが、まだまだ使えるから持って行ってくれないか」だって。

2009年から1992年を引くと17年前になる訳だけど、確か「6~7年前」って言っていたのだから驚く。
一般的にどなたでも使用年数を正確に覚えてはいないけれど、若干少なめに言うのが常だ。
しかし、これほどかけ離れるのは珍しいし、特に年配者には多かったりする。

これはリサイクルショップの経験が役に立ったケースである。
簡単に信じてしまい何度も空振りしたりしたことや破断したのが体験として残っているからね・・・
曖昧な話や適当な話し方をする人は似た勘違いと記憶違いがある。

その予兆があればできるだけ具体的なことを聞き出したりして、未然に無駄にならないようには努める。
その過程において、しつこく質問されたと怒りだす人もいたりするんで世の中はややこしいものでもある。
それも俺らの仕事に内だと思うが、ボランティア的には行動はできないから少しギスギスしてしまう場合もある。

でも、お爺さんの息子さんは親孝行だと思った。
あまりの古さを見かねて、離れて暮らす父親に冷蔵庫をプレゼントするなんて素敵な話だ。
昔、俺も親父に電動髭剃りをプレゼントしたら、心から喜んでくれたのを思い出した。