2009/12/19
急な買取は何かしらの事情がある場合が多いかも知れないが、店はやり繰りにひと苦労する場合もある。
しかし、買取品の内容を聞いて良いと思う場合にはできるだけ調整して都合をつけたくなる。
「2・・2年前に買った物ばかりなの・・・今日、今から来て・・・それじゃ、明日は?」
大変切羽詰まっている感じは電話でも分かるし、相当な事情だろうと容易に想像はできる。
「これからは行けませんが・・・明日でしたら、朝のうちならば何とかなりそうですが・・・」
「明日でイイから、何時?朝何時でも構わないわ・・・・」と急かされた。
翌朝、仙台市中心部に近い住宅密集地域のマンションに行った。
ドアーが開くと室内犬が持ち運びケージの中から大きな叫び声を盛んにあげる。
中年女性が声をかけてくるが、何を言っているか聞こえない程、でも、招じ入れているのは仕草で分かる。
「マンションを引き払うから・・・東京へ持って・・・でも、運賃が高く・・・だから・・売ろうと・・・思うが・・・」
キャンキャンと犬の叫びが入るから会話が途切れてしか聞こえないのだ。
「それで、どれとどれを売りたいんですか?査定しますよ」とやっと叫び声の間隙を縫って俺は言う。
「引越し屋さんが・・午後に来るけど・・・単身パックにしたの・・・それに積められる分は・・・だから、・・家具などを・・・」
そう言いながら3LDKの各部屋を行ったり来たりして、どれにするかを迷っている。
「・・これは、高かったし・・・はっぱり、あれにしようか?・・・これも、あれも・・積めないかも???」
俺は初めは黙して彼女の判断を待っていたのだが埒が明かないようだし、俺も無駄な時間を過ごす訳にもいかない。
「兎に角売る物を決めてください、引越しが済んで残る物があれば又買取に来ますから」
優柔不断の彼女には俺がリードして話を進めるしか方法がない。
「あ~ッ、そうね、そうするわ・・・でも、どれにすればイイのかな~??・?」
それでも物を決められないのだからどうしようもないのだ。
「洗濯機、冷蔵庫、ダイニングセットは東京にあるんじゃないの?」と聞いたら、
「そう、そう、全部あるのよ、東京では要らないわよね」と分かりきった返事をする。
「物干し、テーブルもあるでしょ?」
「勿論、あるわよ」と会話が成り立たなくなっていた。
途中で彼女は特殊な事情とやらをポツリと言う。
「わたし、母に騙されて、お金、全部持って行かれて、一銭もないの・・・だから、高く買ってね・・・」
「???何ですって?お母さんに騙されて・・・金を持って行かれた?実のお母さんにですか?」
「そうよ、知らない間に、このマンションも売られていたの!」
と彼女は泣きだしそうな顔で真顔で言うから、俺は返事のしようないし、その話が本当かどうかも分からない。
彼女に付き合っていると俺までおかしくなりそうだったから、買取を素早くやることにした。