リサイクル親父の日記

第834話 儲けが出ませんが、こんな日には有難い感謝、感謝・・・・

2009/12/22

もう5年以上前に買取した新品の額入りの大正モダンのレトロ調の絵が2枚あった。
一般の人からの買取品ではなくて、卸業者から仕入れだった。
新品の仕入れは減価率が高くて利益は小さいのだが、それでもイイ物であれば店の商品としては魅力がある。

その絵は額の寸法で巾30cmで高さ100cmくらいでスマートで洒落ていた。
俺は仕入れて直ぐにレジ脇で一番目立つ場所に掲げたから、お客さんは大変注目する。
何人も何十人ものお客さんは気に入ってくれたし買いたがった、が・・・

俺が一般的な中古の絵を数千円から一万円程度で販売しているが、それは1枚X万円であり2枚だと桁が違ってしまう。
残念だが、それくらいになるとお客さんは買うというところまでは実は難しいのだった。
やはり、俺のリサイクルショップの限界の様なものを思わざるを得ない。

俺の想像ではあるが、安い物を買う、或は、良い物が安いから買う、その2種類の考えでリサイクルショップを利用している。
お金持ちや金に糸目を付けないコダワリストは最初から新品を買いに行くからね。
だから、俺は店の特徴を、良い物を安く買う人にも向くように品揃えするように努めている。

その絵は俺の思惑に叶っていたんだが、しかし、値段が値段なので売れないようだ。
美術館でも博物館でもなく、だから、長い間売れない物を陳列するのもどうかなと考えたりする。
別な物や別な絵が手に入れば、交換して陳列する。

そして、その絵は他の物の陳列の邪魔にならないような隅っこに押しやられていた。
そうして俺の記憶からも薄れているし、時々、品々の入れ替えの時に偶然見かけて思い出す程度だった。
数か月前にある常連さんが、「あの絵、未だあるの?もう一回見せてちょうだい」と言ってきた。

2枚取り出して、並べて立て掛けた。
「やっぱり、良いわね~~でも、値段が気に入らないわ」なんて簡単にあしらわれた。
それで、絵は元の隅っこに又しても逆戻りしたけど、なんか哀れに思ってしまった。

そして、昨夜、常連さんは真っ暗くなってから来た。
「わたしさ、階段の下に飾ってた絵を友達にあげちゃったの・・・其処が淋しいでしょ?・・
あの絵はどうせ未だ売れてないでしょ?・・・2枚だったら幾らにしてくれる?・・・頑張ってよ・・・」

俺は常連さんの彼女がお金があるのを知っている。
時々、来店しては細々と数万円くらいポンと買うし、数年前には古陶器に十数万円以上を出していた。
欲しい物をジィーッと待って、待ち続けて、そして、イザという時にはガッツリ勝負してくる。

俺は単に値引きをして売る気はサラサラないが、今日は寒波のため極端に売上が淋しい。
彼女にこの絵を買ってもらうのは悪くない、いや、彼女に買ってもらうのが良い。
5年目の正月は立派に壁に飾ってもらった方が絵にはハッピィーだよ、なんて考えた。

俺は口上する、「そうですね、この絵は5年前に仕入れて・・・俺が大変気に入っている・・・
・・・何人も・・何人も・・・値段ですけど・・・仕入れは確か・・X万円だった・・・
でも、随分経つし・・・儲けはなくても・・まっ、いいですけど・・・・」

「分かったわ、それで、もらうわよ」と彼女は何とも愉悦に満ちた表情をした。