リサイクル親父の日記

第855話 悲しそうな引越しらしい?

2010/01/18

開店一番に店に来た30代半ばの彼女は疲れ切った表情である。
引越しするので冷蔵庫に洗濯機、エアコン、レンジなどが要らなくなるの買取できないかという。
年式や状態によると説明すると、その辺が定かでないと言う。

もう少し聞いて行くと、借家で一軒家で今月中まで片付けをしないとならないし、大半は運んでいるらしい。
できれば直ぐに来て欲しいとなって、場所が店から近いから1時間後に行くことにした。
でも、随分疲れたような感じがしたし元気が無いのだった。

一軒家が6棟並んで建てられた借家だが、築40年は経っていそうでトタン屋根に外壁は赤錆びが地図の様に浮き出ている。
時間が来ても彼女は来ない、でも庫寒い中で待っていた。
5分後くらいに赤い軽自動車が慌てた運転で近付いてきた。

玄関脇に置かれてた洗濯機は1991年製、家の中にもう1台洗濯機がある。
冷蔵庫もあるがこの2台はそれでも2001年製、レンジは見た目で古過ぎると分かる。
2DK間取りの借家はどの部屋も物がかなり少なくなっているが、残っている物は全て廃棄処理するしかない物ばかり。

彼女が一人で暮らしたにしては食器の数などから多過ぎる、しかし、子供がいた様子もない。
エアコンはバリバリ新しく、1年半前に借家に入る時に取り付けたのは事実のようだ。
「引越し先に持って行っても良いんじゃないの?」と聞いた。

「実家に戻るの・・・」と元気のないか弱い声、やはり疲労感が出まくりだ。
「一人で暮らすには部屋数が多かったんじゃないですか?」
「?・・別れたの・・どうしようもない男で・・・」ぐっと堪えていた感情が蘇るのかもしれない。

口調が強くなって、「働いても・・お金も一銭も出さないの・・・ず~っと1年半以上も・・・
わたしが全部払うしかなくて・・・もう・・我慢・・・耐えられなくなったわ・・・・」
「それは大変な目にあったんですね、変な男に・・・別れて良かったね」と相槌を入れる。

「うん~、もう懲り懲りだわ・・ダメ男なんか!」と決めセリフだ。
そこに玄関口から声をかけたお爺さんが要る。
「外の洗濯機も全部片付けてくれよ!」と威張る。

お爺さんが去った後に俺は聞いた。
「大家さんですか?随分威張るなあ」
「家賃までだから・・今度の給料日に払うんです・・・お金も全部無くなってしまったの」

女は悪い男につかまっても、別れて再出発できるそうだ。
しかし、男は真逆で再出発が上手くいかないらしい。
確立的な見方ではあるが、女は立ち直りが上手くて、男は引きずるらしい。