2010/01/26
俺はリサイクルショップから開業したが、最近は骨董品も取扱している。
骨董品屋その類の品は保管状況によって大きく価格が左右する。
皆さんも「なんでも鑑定団」という番組を見ているからお分かりな筈。
先日、仙台市北部の泉区に骨董品の買取に行った。
掛け軸に壺、それぞれ数点を売りたいということだった。
掛け軸は床の間に飾っていた品、他に共箱入り2本は押入れの奥深くに入っていた。
床の間の品は長期間飾られていたのだろう、誇りが雪の様に軸棒上面に積っているし、シミが斑点状に浮き出ている。
押入れの品はどちらも桐箱を開けるとプ~ンとカビ臭いのだ。
高名過ぎる作家名は一般的にはあり得ないから贋作でしかない。
持ち主も十分に分かっていて、俺の指摘に喜んで納得してくれる。
だが、床の間の品に対しての思い入れは大変強く、その価値は車1台分だと主張している。
この交渉は難航しそうだし、俺の様な駆け出しには手が出せないし、売り先も思い浮かばない。
さて次に壺ですが、九谷焼小振りの花生け、そして、韓国青磁である。
こんな時に骨董品を取り扱ってきた経験が役に立つのだ。
2点とも俺の記憶にある作家の様な気がした。
「この壺はイイですね、ところで箱はありませんか?」と聞いた。
お爺さんはフンと中空に目をやった、イヤ、俺から目線を反らした。
「箱?箱は捨てたよ、飾る時に・・・付き合いで買ったんだが、高かったんだぞ」。
共箱があれば由緒もはっきりできる。
俺も店で販売する時に売り易いのだ、同時に買おうとするお客さんも共箱があれば関心が深まる。
だから共箱はとっても重要な要素だ。
「それでは査定結果を・・・掛け軸のシミは勿体なかったですね、箱もないのはマイナスになります・・・」。
お爺さんのご機嫌が斜めにならないかどうかを確かめながら、ゆっくり噛み砕くよう説明した。
「掛け軸が・・これはX万円、こっちがX千円です・・・壺は箱があれば・・もっと出せるんですが・・・X千円とX千円ですね・・・」
お爺さんは目をギョロリ大きく開けると、「うん、うん・・そんなになるか・・・これで・・友達と4~5回は一杯飲めるな、アリガト」。
帰り際に俺は玄関に飾ってあった小さいデッサン画が目に留まる。
「この絵も素敵ですね」。
お爺さんは自慢しながら、「昔、佐藤忠良」とパネルディスカッションした時に記念に貰ったんだよ・・売らないよ・」。
宮城県出身の日本の彫刻家である。
可愛らしい少女の絵はとんとうに素敵だった。