リサイクル親父の日記

第864話 買い物依存症なの、わたし・・だから・・

2010/01/27

「・・前に来てもらったことあるんだけど・・憶えてないかしら・・・駅裏のマンションだけど・・
食器棚、カナダの物・・2台・・あるけどさ・・新しいの買うから邪魔なの・・・」と明るく話まくる。
俺は記憶を探るが、「えぇ~?そうでしたかね?」と曖昧に答えるしかない。

「憶えてない?・・イイのイイの・・だから、お願い・・6~7年くらい使ったけど・・全然問題ないわよ・・
何時にしようかな?明後日の昼、12時半、昼休みに戻れるし・・・ダイニングセット、2人用、椅子が二つ・・これも・・」。
話はドンドンと進むのだが、要領を掴むのに一苦労するのだ。

前日、予定変更の電話が入る。
「明日の昼にお願いしてたの・・でも、都合悪くなってしまったの・・・だから、土曜日にして・・・朝がイイの・・出かける前・・・
イイでしょ?昼に新しいのが届くから・・・」と一方的な連絡である。

当日朝、マンション前にトラックを止めたら、玄関ロビーから手を振りながら出てくる女性がいる。
ピンクのパジャマにカーディガンを羽織っているが、仙台駅前近くの準大道路で朝でも人通りが多い場所だ。
俺は違和感を覚えた。

人懐っこい彼女でもある、しかし、初めて接するお客さんに間違いはない。
最初の電話は彼女の勘違いが混じっていたのだ。
化粧もしていない素っぴんでパジャマ姿の彼女とエレベーターに同乗して10階に向かう。

エレベーターから彼女の部屋8号室までは通路が長い、歩きながら眼下を見ると高所恐怖症の俺は足がすくむ。
「恐ッ!」と思わず言うと、「そうなのよ、通路が傾斜してるから余計恐い感じだわ」と答える。
部屋に入ると物が溢れている、何処かで似た光景を見たような記憶があるが、ここも物が、物が溢れているのか。

玄関から通路が2mほどでキッチン、周囲が3部屋だ。
一人暮らしの独身女性であるが、食器棚2台、ダインニングセット、冷蔵庫、大きなぷらボトルのミネラルウオーターセットなど・・・。
食器棚にはギッシリと食器が詰め込まれているが、テーブルにもトースターから何から何まで、紆余曲折とは言ったものだ。

狭いキッチンは床の空いているところも探しながら紆余曲折しないと進めないのだ。
S字に進み、J型に曲がったりするのだから、もう笑うしか俺にはとる方法が無い。
寝室は真ん中にベットがあるが、戸以外の周囲にタンスやクリアーケースが積まれている。

驚くのはその空中三方に洋服がハンガーに吊られて掛けてある。
だから、ベットから見上げれば、多分、俺の想像だが、真上の天井以外は洋服がグルリとぶら下がっているのだ。
居間も真ん中にコタツがあるが、ノートPC、その周りに化粧品が林立しているし、周辺は寝室同様に物が下から上までビッシリギッシリだ。

「ウ!・・ガォ!・・ウ~ン・・」と呻いてる俺も見て彼女は言う。
「わたし買い物依存症なの、ストレス発散できるから・・・分かってるの・・でもね、でも予算決めてるの・・1回千円までね・・
あっちこっちのリサイクルショップで買うの・・・見ると買いたくなるの・・・買いたくなるの・・押さえられなし・・」と自己分析する。

その後、俺は食器棚を運び出すために気の遠くなるような片付けをする。
入っていた物を取り出して移動するのだが、移動する場所が無いので、移動のための移動を繰り返すのだ。
その無意味な作業をしながら、人の性とは何たるかを思うのだ。