2010/01/28
ある夕方、真っ暗くなった頃、長身の男性が店には入って来た。
「ここは買取してますか?」と問い掛けてきた。
「勿論、買取してますよ」と答える。
すると、「ほな、車から持ってきますわ」と店を出ようとしたので俺も後を追った。
ワゴン車の後部荷台ハッチを跳ね上げると箱入りのトースター、コーヒーメーカー、鍋などがある。
「いいですわ、持って行きます」と彼は一人で取り出そうとした。
7~8点はありそうなので一人で無理なので俺も無理やり手を出した。
「すんまへん」と謝意を言いながら彼は取り出すのだ。
助手席には奥さんらしき女性が見えるが、前を見たまま座っている。
「言葉が違いますね、出身はどちらですか?」と探る。
「分かりますか?京都ですねん」と軽~い言葉使いで知り上がりのイントネーションで応える。
「転勤ですか?」と更に俺は追った。
「ちゃいますねん、去年、仙台に転勤になったんです、そして、2~3日前に妻が仙台に来たんです」とニコッとする。
「そうですか、でも、これは新品じゃないですか、使わないんですか?」ともう一度追った。
「オマケに貰った物やダブったりした物ですわ、何処に出そうかと・・仙台の事情も分からないし、取り合えず車で探してたんですわ」。
それから、品々を検品するが、新品で未使用だし商品としては俺は大助かりだ。
「全部買いとりできます、締めてX千円です、他にもあれば持って来てください」と告げる。
「これから荷物整理するともっと出てくる思うわ、そん時は頼むわ」と軽~い調子で言う。
軽い調子の喋り方、俺の耳に気持ち良くて悪い気はしない。
久しぶりに聞く京都弁は、学生時代に京都旅行をしたのを思い出させてくれる。
同級生の家に数泊して街を見学したのだ、懐かしい限りだ。
「夏は暑いですよ、ほんまに暑いですよ」と俺も夏休みで大変暑いと感じたのだった。
「しあんくれ~る」という有名なジャズ喫茶に行ったっけッ。
青春は懐かしく遠い昔だが、思い出はハッキリと胸に刻まれている。
遠い記憶や思い出は普段は忘れているから滅多には思いださない。
今回の様な時に記憶が揺り動かされたりすると大変嬉しくなってしまう。
そして懐旧の念はイイ思い出として浮かぶらしい。
「ほな、おおきに・・」彼は挨拶をした。
俺も慣れないが「おおきに、また、お越しやす」なんて京都弁には程遠いアクセントで言った。