リサイクル親父の日記

第868話 分からないのに分かった様なことを威張る親父かな

2010/01/31

知ったかぶりをする人も困ったのだ。
分かっている風に知ったかぶりを堂々と自信を持って断言してしまう。
その時に、俺が虚勢や虚言だと見破ることができれば振り回されもしないが、俺も自分の知見に自信がなくて引きずられてしまう。

何度も経験しているので、その結果について自省すれば、またやられてしまったか、程度の話ではある。
ただ何時も思うけれど、どうして簡単に騙されるのかという俺自身の見る目の無さであり、それが少し情けなかったりする。
店の者たちに無駄な労力をさせたり、期待させたりと皆を無為な作業に巻き込むことにもなる。

陳列棚の最上段に大きな太鼓を置いておいた、初めて店に来た親父は太鼓に大変興味を持った。
バチを手にとって上段に振りかざして、ドンドンと太鼓を試し打ちした。
太鼓の胴部分もパチパチと叩くと、「ウン、これは安いし、新しいね」と言う。

太鼓は新品だが仕入れが安かったのでそれなりの価格にしてあった。
1年に1個売れるかどうかだが俺は在庫を置くように努める、それは、そん所其処らでは取扱してないからね。
その珍しさと面白さに魅かれる、同時に太鼓も置いてるよ、という驚きをお客さんに与えられるからね。

こげ茶色に塗られた胴部と太鼓面を数回もバチで叩いた後に親父が言う。
「これはハリだね、ハリじゃダメだな」と乱暴にバチを放りだした。
俺は商品にケチをつけられているようで腹が立ったのだ。

*ハリ・・胴部分が円筒、何枚かの板を張り合わせた状態。
 くり抜き・・円柱木材の内部をくり抜いて円筒を作る、材木も手間のかかるの高額になる。

「くり抜き太鼓もありますよ、倉庫にあるから持ってきてもイイですけど、ご覧になりますか」と告げる。
「ほ~、そうかい、見てやってもイイけど・・・」と威張った。
「それでは店に来たら電話します」と伝える。

次の日、離れた場所にある倉庫に従業員を太鼓を取りに行かせて探させた。
そして、今日太鼓が店に着いたので朝電話を入れた。
夕方、親父は奥さんを伴って現れた。

二人は太鼓に近寄り、親父は前と同じにバチでドントン、パチパチと試し打ちをやり始める。
確認も程度というのがあると思うが、辺りを全く気にせずに夢中だし傍迷惑状態。
奥さんは値札を見ていて呆れているようだ。

その後、二人は太鼓の側でヒソヒソ話をしている。
「・・良いけど・・・」、「・・高い・・・」、「・・金が無・・・」、「・・2万円ま・・・」、「諦め・・・」、ブツクサ・・
親父がレジに近寄って来た。

「ハリだよ、だから、ダメだな!」、そして、二人は逃げるように店を出た。
くり抜きの太鼓は大きさにもよるが、直径50~60cmだと30~50万円はするのだ。
今回の太鼓は中古であるが、くり抜きで、数10年前のもので状態も良好である。

胴部分に年輪が湾曲状に弧を描いてくっきり現れていて、何処にも継ぎ目、ハリ目はある筈がない。
値段も10分の1くらいに破格の安さだ。
虚言に振り回されたり、プライドを傷つけられると腹が立つ、俺はまだまだ気持ちが若いのかもしれない。