リサイクル親父の日記

第871話 仙台から1時間以上も南下して、何かして

2010/02/03

店を開けて直ぐに電話があって買取を申し込んできた。
喋り方も内容も丁寧な言葉使いに簡潔であり、尚且つ、謙遜もしているので興味が強くなった。
場所はかなり遠いのだが、内容的には躊躇したくなるものだ。

古銭が10枚、刀の鍔が2枚、他に刀の部品が数点だ。
ありきたりの物であれば買取金額も少ないし、すると、お客さんは売らないことも考えられる。
すると往復2時間の空走りは俺には負担となる。

だから電話で少し詳しく内容を聞き出したかった。
「古銭は残った物で・・10年前に小判は売ったんです。鍔は黒色で鉄製かも知れません・・・」と声弱く言う。
「小判は無いんですね、古銭の形はどのような感じですか?」と古銭の種類を探った。

「小さくて四角くて金とか銀とかだと思います・・それに大きな丸い銀色のも・・・ダメですか?」とだんだん小声になりつつ答えた。
中年の奥さんには、それ以上を聞いても答えるのが難しそうだし、四角であれば買取ができそうだと思った。
「家に介護してる母がいますので、申し訳ございませんがご出張してもらえないでしょうか?」と申し込まれる。

「それは構いませんが、それでは これから出発しますので・・」と急ぎ車に乗った。
住宅地図で調べると大きな敷地であり、到着すると敷地の半分が不自然に仕切られていた。
それを尋ねると「父は働かず放蕩ばっかりでした。母は痴呆症が酷くなり目が離せません、ご出張本当にありがとうございます・・」。

玄関から奥座敷に通されて、煎茶を淹れてもらったが、挨拶の後のその言葉に俺も戸惑ってしまった。
「敷地は半分ほどを売ったんです・・・この家もいつかは建て替えたいと思ってはいるんですが・・」。
金具が多数付いている時代物の小振りのタンスや文机が置いてある座敷は雰囲気がイイ。

奥の部屋から丁寧に持ってきた桐の小箱には、紙に包まれて品々がひっそりと収まっている。
「電話でもお話したんですが、10年前に小判を打った時に余った物ですから・・・買い取っていただけるかどうか・・・」と不安を口にした。
俺は無駄足はできないから「あまり高くは買取できませんが、十分査定は出ますから、ご安心して下さい」と告げると、彼女は安堵の表情を浮かべた。

箱の中の分を一括して買取することにしたら、彼女は大喜びしてくれた。
勿論、俺も勝算が無い筈はなく、店でコツコツ時間をかけて販売すれば儲けは出ると踏んだんだけど。
「父は道楽者で、財産を食いつぶしたよなもので・・・大島紬なんかどうですか?買取できますか?」と言う。

そして、奥座敷から男物の新品と女ものを持ってきた。
「父は袖を通しませんでした。母の物は値段次第で売ってもイイかなと思っていますが・・・」。
着物に見識が低い俺でも大島は知っていた。

「商売柄、高くは買えません、できればお持ちになった方が宜しいと思います」と告げざるを得ない。
「そうですか、あまりお安いと売れませんし、分かりましたわ」と着物を後ろにさげた。
又、いらない物が出て処分する場合には呼んで下さい、と俺は立派だったろう旧家を後にした。