リサイクル親父の日記

第897話 1万5千円しか持ってないって、言ったのに・・・

2010/03/03

値引き交渉の仕方も色々あります。
ケチを付けてけなして、要するにアラを指摘して値引き要求するとか。
お願い~や助けて~と懇願して甘えて要求するとか。

いつも買っているでしょ、とか言うが、少額だったりしているとか。
値引き交渉にも人柄や人格が現れるのだ。
基本的には値引きに応じないのが鉄則だが、俺流としてはアカデミー賞最優秀演技賞には値引きを提供したくなる。

必死に迫る演技や口説き文句で大変上手な人がいるものだから、こんな人に出会うと俺も感動する場合がある。
わずか100円のために、数百円のために口角泡を吹きながらお願いするの、ってことだ。
身ぶり手ぶり、身体を前後に揺らしたり腰をひねったりして哀願したりするんだ。

或は、普段は何も言わずに高額品を買う上客だけれど、思う値段より高い場合だけ少しの要求を控えめに言ってくるとか。
骨董好きの常連さんで足繁く通って来ているから、気に入った物をポンポンと買っている。
時々は値引きしたいと思っていてチャンス到来と喜んで応じたりしたくなるのだ。

店の基準を勝手にその都度変更するとお客さんには不公平になる。
やはり一定の基準は守る必要はあるが、俺も人間だし情もあるから、ケースバイケースは避けられない。
俺自身が自分で納得できる理由は探しているが、それが公平さや平等を標榜するものではない事実がある。

独断と偏見に満ちた運用かも知れないが、分かり難くて基準たりえないという矛盾はいつも孕んでいる。
矛盾が人間的だし人情の表れでもあるし、ヒューマンイズムかも知れないと思う。
大金の買い物は丁々発止の交渉をして求めるでしょ、車も家も・・・リサイクルショップでも同じことがあっても良いんじゃない。

おじさんは電動工具をレジに持ってきて言った。
「1万5千円にまけてよ!」と3千円の値引きを求めてきたが、俺は即断った。
すると、財布を開いて見せて、「ホラ、これしか、1万5千円しか持ってないから・・・」言い張った。

俺は言い草と強引な態度から演技だと見抜けたのよ。
「ウチも仕入れ値があるし安く売っているしね、値引きできませんが・・・」。
俺の言い方と態度が気に入らなかったのかスッと店を出て行った。

すると直ぐに戻って来て1万8千円をレジに放り出したのだ。
それは駐車場の車から残りのお金を持って来るほどの時間しか経っていない数分であった。
浅ましいとしか思えないし、俺に対しての最優秀演技賞には値しない。