2010/04/11
仙台市太白区柳牛という場所は、東北新幹線を挟んで俺の店と反対側の地域である。
JRの線路もあるので電車の通行が多い時には、踏切で停止時間もとられて思いのほか時間がかかったりする。
そこのマンションの1階の部屋に、俺はレトロな文机を台車で配達に行った。
迎えたお客さんは顔は知っていたが話をした覚えはなかった。
しかし彼はとても喜んで迎えてくれたが、実はその文机の到着を喜んだのが本当のところである。
「ホントに探してたんですよ、どうも有難うございます、又、店に行きますから」。
これほどお客さんが買ってくれた商品で喜びを素直に表現してくれると、俺まで嬉しくて感謝もしたくなる。
リサイクルショップをやってて良かったなぁ、なんて時々思えるのもこんな時だ。
小さくても人の役に立てているんだ、という使命感や存在感、やりがいが確認できるんだ。
文机とは日本的な事務机のことだが、これは総ケヤキ板で両袖引出型、少し大ぶりでガッシリ、ドッシリした使いこまれてはいるが時代が感じられた。
翌日、彼は店にやって来た。
「アレ、良かったです、ばっちりです・・・・・・・・・」と饒舌に報告してくれる。
「いろいろネットで探したりしてたんですよ、でも、ネットではレトロ品って高いし・・・」と話は止まらない。
「アンティークショップや骨董屋さんを探したけど・・見つからなくて・・・本当に良かったんですよ」。
彼がこれほどお喋りだとは全く予想に反している。
「・・あっ・・そうですか・・」と俺は気の乗らない相槌を打つだけだった。
「だってぇ、3年も探してたんですよ!それでやっと見つかったんですから・・・」と彼は感激を心底から伝えてくる。
「そんなに探してたの?よく諦めなかったね」と熱心さを感心した。
「おれは・・妥協するのイヤなんすよ、絶対欲しい物を探さないと・・買わない性質で・・・」と自慢する。
3年の苦労はあったろうと想像できたが、それは苦労でもあり探す楽しみでもなかったかと感じた。
スポーツ選手の様に燃え尽き症候群と化して、次の目標が見つかるまで空虚感に苛まされなければイイのだが・・・
と、彼は饒舌を連続的に継続してくる。
「あの、もう一つ探してるモノがあるんだけど・・・探して欲しいんですが・・・」と言葉を継ぐ。
「あれば持ってくるけど、或は、見かけたら仕入れるけど」。
「ガラス戸の本箱で・・横幅60cmのモノ・・・昭和30年ころの・・・」と指定が細かい。
俺は彼の話を聞きながら、ひょっとして3年先まで付き合いが続くのかと恐れが出た。