リサイクル親父の日記

第944話 和ダンスを買ってくださいっ!

2010/04/21

電話で男性が申し込んできた。
「和ダンス、古いやつですが買取しますか?」。
一般的な使用感のある和ダンスはほとんど売れないから、「無理ですね」と断った。
「金具のいっぱい付いた物で・・・古いんですよ」と食い下がってきた。

もしや骨董品で時代箪笥、ここでは仙台ダンスが有名品であるので、その可能性もあるかと思えた。
「古くて、金具がたくさんあって、壊れていないですか?」と聞いた。
「もう全く心配ないですよ・・持って行くから見て下さい」。

数時間後にワンボックスカーで彼は店に来た。
和模様で江戸風柄のシャツを着こんでいる。
「俺、こんなの好きなんですよ、でも、引っ越しで狭くなるので入らなくて・・・それで・・」。

後部ドアを開けると、引出が2ツ足元に出されていた。
一目見ると、それは古くはない、新しく造った俗に「民芸ダンス」と呼ばれている金具付き小ダンスなのだ。
「アレッ、これ民芸ダンスですよ、古い物じゃないですよ、どうしたの?」と突っ込んだ。

彼は慌てたように言い訳する。
「やっぱり、そうですよね、古い物だと思ったんだけど・・両側で引出が引き出せるんで・・珍しくて・・・」。
彼が言ってることが、俺には理解できないのだ。

古いと言ったり、新しいと言ったり、俺が指摘すれば簡単に認める。
「他にもあるんですが・・焼き物の恵比寿と大黒、木彫りの寿老人・・・」。
「あなたも骨董のプロですか?持ってきた物が少し玄人っぽいし・・」と問いただした。

「えぇ~~10年前くらいにセリに行ってて・・その時に買ったりして・・・」と声が小さくなる。
事情が呑み込めて、俺は、「それでは買ってもイイのだが・・・希望値を言って下さいな」と促した。
彼は当時自分が買った値段を説明しだした。

「それは現在ではあり得ないよ、とても値段が合わないから無理だね」と俺は言いきった。
「そ・・そうですよね・・・安くてもイイので・・・」懇願してきた。
「俺も、昔でもセリに出入りした人から買い取るのに、バカみたいな値段は言えないよ」。

・・・
沈黙が続いたから、俺はアドバイスした。
「セリに持って行ったらイイと思うよ、相場も分かるし」。
「それは~~そこしか知らないし、会主とは会いたくないし・・・」とションボリした。

「どんな事情かは分からないが、俺もあなたから叩いて買取するようなこともしたくないし」と流した。
セリに来なくなったり、再度、突然復帰したりする人が稀にいるが、周りからはあまり信用はされない傾向がある。
廃業、転業、再開、求職、まあ色々あります、それぞれの人生だから・・・