リサイクル親父の日記

第952話 事情は結構ですが、俺の事情は考えてくれないの?

2010/04/29

「半年前に買ったんですけど、事情があって、買取できますよね?・・
幾らになるかしら?見積に来てちょうだい・・・・」と一方的にまくしたてている。
「もう少し具体的に、何があるか教えて下さい、そうでないと分からないから・・」と俺は告げた。

「半年前にアパートを借りて、そこに色々買い揃えたの、でも、事情があって・・・・」と別な説明を始めた。
「そうじゃなくて、売りたい物はどんな物ですか?」と俺は本題に誘導した。
「洗濯機、1~2回しか使わなかったわ、レンジボード、これは使ってないわ、ソファーとテーブル・・これも全然・・・」。

話すことが如何に物が新しいかに重点がおかれている。
そして、事情があって売るのだが、できるだけ高く売りたい気持ちが前面に出ているのだ。
「1社が11時に来るから、その後、11時半に来てちょうだい!」と命令口調になっていた。

これほど強欲的に言われると、俺も気分は乗らないし、見積も数社との競合らしいし・・・
でも、この季節は頻繁に買取がある訳でもないから、ダメ元で見積に行くことにした。
そのアパートに着いたら、顔見知りの同業者とすれ違う。

会話をする仲でもないので互いにすれ違っただけだが、俺は彼がその依頼で見積に来ていたと感じた。
ドアを開けて中に入ると、電話の奥さんと旦那さんが二人で暗い顔をしている。
「1点毎に見積をして下さい、先ずは洗濯機」と奥さんが言う。

「あの、4~5点しかないのですから、全体で幾らとさせてもらった方がイイのですが?」と俺は言った。
「いや、困ります、比べようがないので・・・一つ毎にしてください」と旦那が言いだした。
「それでは伺いますが、例えば、1点だけの買取ということもありますか?」。

「それぞれの一番高い値段で処分するんで・・・あると思いますが」。
「分かりました、実は1点でも数点でも1回あたりの手間は似たり寄ったりですので・・・」。
「どうゆうこと?値段が違うんですか?」と奥さんが突っ込んできた。

「一つの荷物を取りに来るのも、二つ三つ取りに来るのも、トラックで来て搬出する手間は大差ないでしょ」。
「そんなことわたし達には関係ないわ、高いかどうかが問題なのよ!」少しヒステリック気味だ。
「見積には条件が付きます、条件が違えば手間も変わりますね、まとめた方が手間は1回分で済みますが」。

「そんなこと言われたって、他所の店は一つ毎の見積ですよ!早く見積してよ!」。
ここまで尊大に指示されると、俺は耐えきれなくなるんだ。
買取の仕事だが、頭ごなしに命令される憶えはないし、単なる強欲夫婦の言に従う気にはなれない。

「帰ります」と俺は伝えた。
慌てた二人が俺の背中に言ってきた。
「見積してよ!その為に来たんでしょ!?・・・」、そう聞こえた。