リサイクル親父の日記

第959話 錆びだらけのチェーンは売れますよ・・・だって

2010/05/07

30歳くらいの女性が骨董品コーナーを何度も往復しながら見ていた。
更に、日用品売り場も熱心に見ていた。
こんな風に慈しむように骨董品を見てる人は、骨董が趣味であることは間違いない。

何故なら、うっとりとした表情といい、例えば、手に取ってみる場合にも大変丁寧に扱うから。
骨董品コーナーはレジの前方と近いので、お客さんの様子を観察するには都合がよろしい。
同時に粗雑に扱われて傷つけられたり壊されたりするのを防ぐ目的もある。

時々、手に取って眺めて考えているお客さんに俺は声をかけたりもしている。
それから会話が弾んで常連さんになった人も少しはいるし、同好の人とは意思疎通ができて楽しいものでもある。
単に興味本位だったりとか冷やかしの質問にはウンザリもするが、分かってくれる人とは話も楽しくなるのだ。

彼女が興味を持っていた焼き物や家具について、俺は得意気に解説(?)をすると素直に頷くのだ。
自分の好みなどを言いだしたりと発展したが、やがて店を出て行くけど印象はイイのである。
数分たった頃、彼女は再度店に入って来た。

「あの~外にある、錆びたチェーンは売りものですか?欲しいんですが・・・」と控えめに言った。
外にある錆びたチェーン?そんな物を売っていたなんて記憶はないから、何処だろうか?と思いめぐらした。
「自転車の側にあるチェーンなんですが?」。

「どれでしたかね?」と俺は外に出た。
自転車売り場の隅っこに蛇がとぐろを巻き損ねた状態で団子状に錆びたチェーンがあった。
自転車10台をまとめて絡めておいた物である。

全長10mくらい、5~6年も使用してたので錆が相当出ていた。
自転車を絡めておいても、錆びで自転車のスポークを汚したり、外したり絡めたりする時に手が汚れる。
最近、別なチェーンに取り換えたばかりでほったらかしてたのだ。

「この赤錆びは貴重ですし、わたしもガーデニングに使いたくて錆びさせているけど・・・」。
「これでイイんですか?」と俺は念を押した。
「古い滑車につけるの、錆が出てないと合わないから」と理由を教えてくれた。

長いチェーンの両端部分が1mちょっとと2mくらいの長さで赤錆びているが、中央部はメッキが白っぽくくすんできてる程度。
「どれくらい必要ですか?」。
「長い方をお願いします」。

「錆びてるチェーンは貴重ですよ、売ったらイイですよ、きっと、たくさん売れると思います」。
「・・・」と俺は返事に窮したんだ。
詫びさびの分かる人もいるだろうが、商売だから・・・と思い直した。