リサイクル親父の日記

第967話 フライパンの直径が問題なのよ!

2010/05/15

おばさんは夫と二人暮らしだった。
1年前に息子が戻ってきて3人暮らしになった。
息子は40歳代で独身である。

独立した息子が我が家に戻ったので、おばさんは大喜びしたのだ。
息子は就職活動を半年続けた結果、やっと仕事が見つかった。
両親は年金暮らしだったが一家は安定した生活だできるるようになって、おばさんは小遣いを少し自由にできるようになった。

気の合わない夫と何十年間も耐え忍んだ生活をしていたが、息子が戻ったことでおばさんの愛情の対象ができたのである。
俺の店には以前から来ていたので、夫婦二人の生活状態は何十回も愚痴を聞かされていた。
正確に言うと、息子が戻ることが決まってから、おばさんは嬉しくて堪らなくなっていた。

夫の愚痴ばかり言っていたのが、息子の話ばかりに急旋回したし、その嬉々とした表情に俺は驚いたのだ。
暗い顔つきで怒った口調と表情だったのがだよ、ニコニしてデレデレして場末のホステスの様に媚びるような顔つきになってしまった。
若い時分から共稼ぎだったらしく、料理は嫌いだったから全くもって不得手で知識もないのだ。

ところが最愛の息子が同居したら、年金暮らしで時間もあるし、料理をすることにしたのだ。
せっせとテレビの料理番組を見るし、知り合いから料理の手ほどきを受けて勉強を始めた。
時々、息子が「美味い」と褒めてくれたりすると一層やる気が出て張り切ってしまう。

運送会社に勤めた息子は早朝4時に家を出る。
弁当を作るには夜中の1時~2時に起きて準備する。
出勤後に又寝る。

おばさんの話を聞いていると、彼女の幸福感が手に取るように分かるが・・・
子に依存して生きるのも悪くわないかも知れないが、他人の俺としてはとても気持ち悪さを感じる。
親も子もお互いが自立して生きたいものだと考えるけど・・・

今日はおばさんがフライパンを買ったのだが、その理由が何とも言えない。
「このフライパン、新品よね、何センチあるの?」と新品のフライパンをレジに持って来た。
25cmと書かれた紙の説明書が付いているのだ。

「本当に25cmあるかどうか、測ってちょうだい」といつものように我儘に言う。
一応測るが、当然だが25cmなのである。
「どうして25cmにこだわるんですか?」と質問を返した。

「えっ!だって料理番組では25cmのフライパンよ、わたしのは27cmだったの、だから仕上がりが良くない・・・」。
それ以上は聞く気になれなかった。
「これで大丈夫だわ、うん」とおばさんはフライパンを嬉しそうに持ち帰った。