リサイクル親父の日記

第968話 ちょっと落ち着いてください、ゆっくり、ゆっく・・・

2010/05/16

話の流れが訳分からなくなることが時々あるものだ。
その買取依頼の電話では「買い取りして欲しい物があるの、いつでもいいんですが・・」と最初は言っていた。
俺は日時もさることだが、買取品が何かが大事だから質問した。

「えぇ、物はどんな物ですか?」。
ところが返る言葉は全く関係のない内容である。
「1月に買ったんだけど、福島の実家で病人がでてしまい・・実家に帰らないといけなくて・・・」と早口が続く。

「それでね、家にはあるから持って行ってもしょうがないの・・今、実家とアパートを行ったり来たり・・・
買ったばかりだし・・勿体ないのよ・・・アパートは今月末までに出れば良いんだけど・・・」。
この人は俺の質問に答えないで、言いたいことばかりをまくし立てるのだ。

「はい、ところで品物は何ですか?」と再度声を強くして聞いた。
「あっそうだったわ、洗濯機でしょ、それにガス台よ・・・全然、少しかな・・ちょっとだけしか使ってないのよ・・・
ね、勿体ないでしょ?だから、買取して欲しの・・・何時でもいいの、そちらの都合のイイ時で・・・」。

「分かりました、それでは明日でも行きましょうか?」と話を進めることとした。
「明日?今日が良いわ、だって、今ねアパートで片付けしてるの?これから直ぐに来てもらえないかしら・・・」。
どうなっているのかと思ったが、精神的な混乱や慌てふためいていると支離滅裂だったりするのかもしれない。

そのアパートは幹線道路沿いだから分かり易かった。
「すいません、急がせてしまって~これ洗濯機、綺麗でしょ?ほとんど使わなかったの・・・ガス台はあれね、こっちも・・・・
新品状態ですよね、大丈夫ですよね・・・わたし、福島にも、実家にも・・・」と電話以上に慌ただしく話してくる。

俺は彼女の前で「フーッ」と大きく一呼吸した。
「まぁ、少し落ち着いてください、えぇ、確かに新しいし申し分ありませんよ」と言った。
「そ、そうでしょう、わたしの言った通りでしょ?買取できますよね?・・・」と又再開してくる。

部屋の様子は引越し寸前状態だから、大物家具や家電はそれなりにあるが、小物などが乱雑だった。
「この婚礼タンスは持って行ってくれる人決まっての、食器棚は古いから捨てるの、この辺はダメでしょ、捨てるわね・・・」。
やっぱり一旦口を開くと止まらなくなるらしい、延々と続きそうで俺は閉口してしまう。

そこで俺は速く買取を済ませて退散しようと思った。
「では、運びますので、宜しいですか?」と確認をした。
「洗濯機、未だ外してないの・・分からなくて・・・大丈夫ですか?・・」と又しても口が回り始めようとした。

「大丈夫ですよ」と答えて、俺は黙して作業にかかった。
その間も彼女は部屋の中でウロウロしながら何事かを呟いていたのだ。
聞こえないふりをして作業に集中したんだ。