2010/05/20
店に買いに来るお客さんの中に違和感を感じることはない。
普通の人が圧倒的に多いから、まあ俺の理解できそうな一般的な庶民ということである。
金がありそうでも無さそうでも、お客さんたちの金銭感覚が理解できるのだ。
ところが俺の庶民感覚をはるかに超えた人が来たりすると対応の仕方がコンガラガル。
それも金持ちとなれば何もかもが発想が異次元的だから、ジョークも通じる訳がない。
鳩山首相の話を聞いているのと変わらなくなってしまう。
ピッカピッカの黒塗りベンツで老夫婦が店に入って来た。
入口を入ってお二人はグルーッと店内を見渡したが、少し歩んで何やら話をしているが、俺には聞こえない。
ゆったりとした所作に服装が垢抜けているし、高級感が漂っているのは俺にも分かった。
俺は無視していた訳ではないが、見ないようにしつつ気は付けていた。
すると踵を返して出て行ったのだが、直ぐに奥さんは戻って来た。
勇を奮ってレジの俺に近付くと、「買取って言うのかしら・・不用品などはどのようになさるの・・・色々・・」。
1回聞いただけでは何を言わんとしているか分かり難かった。
「買取のことでしょうか?どのような物が御不要になりますか?」と丁寧に聞いたんだ。
「10年ちょっと前に新築したんですけれど、二人では広くて・・掃除も大変なんですわ・・・それでマンションにお引越しをしよう・・・
主人も狭い方が良いわって言うし・・・大変なのよ・・・マンションは持っているんですがね、今は貸してるの・・・」。
俺は途中で遮りたい衝動にかられるが、話を頷きながら聞いていた。
何かの質問をすると、その度に返答が横道に逸れてしまうし、黙して納得できるまで話してもらった方が得策かもしれない。
要約すれば、今年中に広さが手頃なマンションを購入して、一軒家を売却するが、什器や備品を売りたいという。
「よく三越で買ってたんですのよ、だから、決して恥ずかしいものはございません・・・」。
「備前焼も人間国宝の方の物ですわ・・・良家から譲り受けた古伊万里や屏風などもよろしいかしら?・・・」。
そしての午前10時見積に行ったんだ。
仙台の古くからの街並み通りのため道路が狭く各家の敷地も広くはない。
そのお宅は10年前の新築でまだ立派である、駐車スペースは2台で敷地一杯に総2階建てだ。
間取りが素晴らしい、玄関に入ると吹き抜けに注ぐ陽光がとても明るい、そして変形しているが広い通路兼廊下だ。
階段は幅広くゆったりとうね曲がり階上に上る。
リビングはダイニングと一緒で広々している、6人掛けダイニングセットが小さく感じる。
まだまだ感心した設計が見受けられるが割愛します。
「どうぞ、どうぞお掛け下さいませ・・お紅茶を淹れますので・・・」と奥さま(奥さんから奥さまに変わっちゃった)はおっしゃる。
旦那様も辞退する俺を制してお勧めしてくれる。
俺は仕事をしたいのだが、上流階級的な方々にはそうもいかないから、焦りながら俺の虚勢で余裕をかましたりしました。
見積詳細はカットしてと、イタリア製家具の数々、カリモク家具が普通に色あせてしまいます。
そんな状況ですから、俺はビビリまくるしかなかった。
見積はできない訳ではないのだが、お二人が支払った金額を思うと、とても査定金額を言う気にはなれないのだ。
検品後に今度はコーヒーを淹れていただいたのだが、手順がちゃんとしているので時間がかかるのだ。
いつもは30分あれば軽々と済んでしまう現場なのだが、今回は2時間以上もゆっくりしてしまった。
・・・