2010/05/23
彼は秋田生まれで、仙台に来て10年くらい経つのだ。
6~7年前に店の近くの中華料理屋に食いに行った時に彼が出前係で働いていた。
時々、食べに行くと元気で働いているので、だんだんと会話を交わす仲になった。
彼の本業は新聞配達で朝刊と夕刊、それにチラシの折り込み作業で生計を立てていた。
夜は時間が有ったので週に数日は中華出前のバイトをしていた。
仕事を探しに仙台に来て、新聞配達が見つかり居付いてしまったらしい。
俺もその店のファンで昼飯に出前を取ったりしていた。
そうこうしてから、彼は時々俺の店にも立ち寄るようになっていた。
医者に行くついでにとか、中華屋の水差しポットを買いにとか、要らなくなった家電を売りにとか・・・
今日はピカピカのホンダ50ccバイクでやって来た。
いつもは自転車なのに・・と俺は不思議に思った。
「去年、買ったすよ、でも・・・」と元気が消え失せそうに言う。
「新品のバイク買ったんだ、良かったね」と俺は普通に喜んだ。
「金なくて、近くのバイク屋に売ろうと思ってる・・・でも、安いしさ・・」と消沈は深い。
「おいおい、どうして売るの?勿体ないんじゃない、どうして買ったのさ」と突っ込みを入れた。
「去年は金が有ったから、2回払いで買ったけど・・・今年は稼ぎが少なくて・・それで・・」。
「でも、安くしか売れないんじゃ、大損しちゃうじゃない、イイの?」。
「バイク無くても大丈夫だし・・・」と俯きっ放し。
「今、幾ら足りないの?必要なの?」と金欠状態を聞いた。
「2万円ないと・・ちょっと酷くて・・・それ以上で売れれば・・・」。
「勿体ない、新品で10万円以上してたろ?」と聞いた。
「XX万円したんだ、バイク屋は安いし、それくらいしか・・」と弱弱しい。
俺はちょっと切なくなった、何とかしてやりたくなった、そして思案した。
名案はないかな?
「俺の店で売ればどうかな?とりあえず2万円渡すから、その後、売れた金額を清算するからさ」。
「エッ?良いんですか、それで!?」と彼の顔色は大変良くなった。
新聞配達部数が減っている、同時にチラシも少ないようだ。