リサイクル親父の日記

第983話 遠洋マグロ船乗りでしたか・・・

2010/05/31

1人暮らしの人がやっぱり増えているのかな?
店の近くの市営住宅は新しくて立派な造りである。
通路も広いし部屋もバリヤフリーだから、お年寄りには快適で最適らしい。

俺の店のお客さんも何人も住んでいて、家具など大型品を時々配達に行くんだ。
反対に住人の引越しに際しての買取も年に何回かはある。
前々から市営住宅にお年寄りの1人暮らしが多いと感じていた。

今日はそこの住人の親戚からの話だ。
「病気で倒れて入院したんだが回復は難しいので・・・部屋の片付けで・・・」と依頼があった。
そして現場に行ってきた。

お爺さんの1人暮らしの部屋は、2ヶ月前の倒れる前までの生活感がそのまんま残っていた。
玄関脇に工具置き棚があり、工具が数点、日曜大工が好きなのか得意なのだったらしい。
洗面室には洗濯に衣類が入ったまま乾燥していた。

ベットもクローゼットもそのまま、壁際の机や引出、棚もそのままって感じがしてた。
貴重品などは片付けられているが、だから探した後は見受けられるが・・・
「必要な物と大切な物はないので、この中で買取できる物があればお願いします」と依頼者が言った。

俺は部屋中を検品してみて、数点買取できそうだと判断する。
しかし、ほとんどは売り物、商品にはできない。
机の直ぐ上の壁に写真が2段に10枚貼られている。

古ぼけて少し退色し変色していたが、ここのお爺さん若い頃の姿に違いない。
屈強な数人と映っている漁船の出港だろう写真、暑い日差しの中で甲板上に鉢巻で腕組みで立っている、・・・・
何故か家族らしい人との写真は無く、1人とか仲間との写真しかないのだ。

脳溢血で倒れたお爺さんは元マグロ船の乗組員だったようだ。
その思い出と共に1人暮らしていたんだろうか?
「マグロ船の船員さんだったんですか?」と俺は聞いた。

「・・そうです・・・」と依頼者は頷くが、それ以上は語らなかった。