リサイクル親父の日記

第989話 思い出すまで時間がかかって、ちょっとしまったかと・・・

2010/06/07

設備関係の仕事を自営でやっているお客さんがいるんだ。
頻繁に店に来ては売っていくのだが、2週間前に驚くことに店から買い物をするのだ。
仕事の関係で色々手に入る物を換金するのが常だったのだが、だから、買うなんて思いもよらないことだった。

そして今日、電動工具を1点買って店を出た。
少しして俺は店内から外に気分転換に出ようとしたら、入り口の近くに彼の車が止まっていた。
まだ発車しないからグッと視線を向けると、別の男がいて、どうやら二人で話をしているようだ。

すると二人はどうやら売り買いをしたらしく、物と金を受け渡しをしていたのだ。
気まずそうな顔でお客さんは、「今、ちょっと工具を・・・」と言葉を詰まらせた。
俺は彼が悪い人ではないし、むしろイイ人だからお客として失いたくはないと感じた。

「あ~、そうですか、気にしてませんから」と言って、俺はサッサと店の中に引っ込んだ。
少しして相手の男が店に入って来て、「売りたい物があるが・・・」と親しげに言うし、彼の知り合いかもと思ったから、その誘いに応じた。
錆びた石油ストーブに錆びたスケボーで、とても買取できる物ではない。

レジカウンターに戻ると、男は俺の後を追って来て目の前に座りこむ。
そして何やら色々と話かけてくるし、問いかけたりしてくる。
まあ適当に答えていたが、見たことはあるが、しかし、どんな男か思い出せないで時間が経った。

「ところで前に持って来た鉄瓶は売れた?」その質問でハッキリと記憶が蘇る。
2年以上も前に大ぼらを吹きまくって鉄瓶と鉄鍋を売りに来た男だったのだ。
あっちこっちのリサイクルショップに持ち歩いて、駆け引きが物凄く強くて、高く高く売り付けた男。

「売り物は幾らでもあるし、どんどん持って来てもイイぞ」なんて啖呵を切っていた。
俺も駆け引きして「どんどん持って来るなら、言い値で買ってもイイけど」と買取したんだ。
見事に裏切られたし、鉄瓶は水漏れがして大損害を被っていたのだ。

それで先程の入り口の件が理解できた。
俺のお客さんは工具に関心があるから、男が持って来た物を偶然見てしまい直売買をしてしまったのだ。
二人とも商道徳に反しているが、これは男が上手でお客さんを手玉に取ったのだろう。

この男は口八丁手八丁の大ぼら吹きだから、お客さんを言い含めるなんて朝飯前さ。
思い出した俺は、目の前の男に対して無視し続けた。
ズーズーしい男もやっと悟ったのか、タバコを半分でもみ消して去った。