2010/06/28
年配の女性がチェストを買うかどうか迷っていた。
「寸法が知りたいわ、部屋に入るかどうか心配だわ・・・」とゴモゴモ言っていた。
値札カードには主要サイズを明記してあるが、それではとメモ用紙に転記して渡した。
「配達はしてくれるの?お金かかるの?」と質問は続いた。
「えぇ、場所によって料金が・・どちらですか?」と配達料を出すために聞いた。
「若い人が知ってるわよ、前に何度か運んでもらったのよ」とつっけんどんだ。
「住所は何処でしょうか?」と俺は更に聞いた。
「仙台市太白区袋原・・・、6階、エレベーターあるわよ」と店から近い場所の市営住宅を言ってきた。
俺はその気どり方が少し気分悪く思えたが、お客様は神様だと思っている類なのかなと感じた。
翌日彼女から買うという電話連絡があった。
「何とか置く場所をつくったの、明日、運んでちょうだい、代金はその時支払うから、いいわよね」。
幅1mで高さが1.5m、白色で新品に近い良品だが、大変重い家具だった。
俺は引き出しを全部抜きだしてチェストを柄だけにして台車に乗せた。
だから柄と引き出しと2回に運ぶのだ。
市営住宅は有難い、バリアフリーの床だから台車のままで彼女の寝室まで運べた。
「アラッ、1人で来たの?前に来たことのある若いお兄ちゃんは?」。
それは5~6年前のことかも知れない。
当時はバイトで2~3人若い連中を使っていたことがある。
あの頃は、日常的に買取と配達が多くて、どうしても人数が要るのだった。
しかし今は、仕事量めっきり少なくなってるし、人手もかからない状況だ。
確かに彼女の部屋には俺の店から買ったであろう家具類が数点ある。
ガッ、ブッ、フゥー、ヒューンという音と共に淹れたてのコーヒーの香りが鼻についた。
俺のためにコーヒーを用意してくれたのか、と淡い期待が浮かぶ。
彼女はチェストを設置終えた俺にお金を支払ってきた。
「どうも御苦労さま!」。
コーヒーをいただいてる暇ないが、期待は期待でお終いだった。
彼女がコーヒーをサービスするなんて、あり得な~い。