リサイクル親父の日記

第11話 直ぐに戻って買いに来るからって、何?

2010/06/29

世の中には不思議な事もあるし、どうしても俺には理解不能だったりすることがある。
そんな時にリサイクルショップを開業して、改めて人間の面白さを発見する。
不特定多数を相手にするから、謂わば世の中の縮図を見たり体験するという現実を楽しみたいと思う。

それは面白いことや楽しいことだけに限らず、むしろ不愉快な方がインパクトは強いのだ。
ついこの間、インドネシアの山奥に樹上生活人がいることを確認した調査が発表されたばかりだ。
人類大好き人間の俺としては、このニュースに感慨深いものがある。

15年前にJAIC関係の仕事でキリバスという南太平洋のサンゴ礁の島に行った時。
若い人類文学研究者が孤島に研修に訪れていて、俺らは数回食事を共にしたんだ。
その研究は南方人と日本人の係わりなどを調査するものだった。

しかし俺は、若い研究者と婚約者が現地でどんな生活をしているかの方が興味があって、二人に結構失礼な質問をぶつけていた。
随分話が脱線したので戻します。
朝一番でお爺さん二人が店に来たんだ。

1人はブレザーを着こんでいる、もう一人はジャンパー姿で、俺は暑くないのかと思ったぐらいだ。
確かにお年寄りには厚着をする人が多いのだけれど、この真夏にですよ・・
二人の様子は普通のお客さんには思えない節がある。

ブレザー姿の彼は、洋服売り場のハンガーラックの片端にシャツやブレザー数点をぶら下げている。
やがて石板の虎の描かれた物を指さして言う。
「あの服と虎を貰うけど・・・後で買いに来るから・・ちょっと置いておいてくれ」。

「後でって言われても、何時来るんですか?」と確認をした。
「直ぐ、直ぐに戻るからさ、30分もかからないよ・・・」と少し怒気が含まれていた。
「そんな時間だったら、今買って行って下さいな、そうすれば面倒くさくないでしょ?」と俺は押した。

「・・大丈夫、大丈夫、直ぐ戻るから・・・」と二人はスタスタと出て行った。
俺は彼が選んだ品をレジに持って来て脇に置いたのだが、心配が膨らむだけだった。
火を見るより明らか、予想も想像も確信できる結果ということだった。

店の近くにイベント会場があって、各種催事があり、出店者は全国から来てたりする。
そんな類の出店者には風変わりな人もいる。
そうでないと理解できないし、キツネにつままれた感覚だけが残る。