リサイクル親父の日記

第16話 ワンワン、ワンワンワン、ビックリもうイヤイヤ、ハヤク、ハヤクゥ~~

2010/07/04

そのビルは道路沿いでバス停があり、手前には電柱が立っている。
トラックを路駐するのだが、宅配のトラックが先に止まっているので、少し先に止めた。
トラックから降りたら、宅配が出発したので、俺はその位置までバックで進んで行った。

仙台市の福沢町は道路事情があまりよくなくて、駐車には苦労する地区だ。
仕事を手早く済ませたいと思いながら、3階のアパートに階段を駆け上がる。
コンクリート階段の反発力は俺の足に響く、上り始めはポンッポンッと登れる。

途中の踊り場で反転して2階の通路に向かおうとした。
その時だった。
「ワン!ワンワン!ワワンッワン!」と通路左側から大きな叫びが聞こえた。

俺の心臓がギューッと縮む、息が一瞬止まる、ハッとした、同時に血流が止まったようだ。
この恐怖は犬好きの人には理解できない。
犬が小さい時から恐い俺は、成人しても幾ら歳をとっても克服できない。

階段側の部屋のドアー前のケージに子犬が入っているが、俺の方に向かって牙をむいて吠えている。
プライベートでは直ぐに退散するのだが、仕事だと思えば、勇気を奮って耳を閉じてやるしかない。
3階の部屋で買取交渉をクイックリーに決めて、運び始める。

逆コースである、3階から2階の通路に降りると同時に「ワン!ワンワン・・」と悪夢は再現される。
今度は予想できているが、気持は準備して構えるのだが、肉体的な条件反射は克服できる訳が無い。
買取品を運ぶために6~7回往復するが、その度に「ワンワンワン!」攻撃に合うのだ。

同時、路駐トラックが気になるのだ。
ワンワンとトラックに俺はとても気になってしょうがない。
早く、できるだけ早く搬出を終わらせないといけない。

老体は数回往復すると、ゼイゼイと息が上がる。
早くという思いは、「早~く」から「早~く~」、「は~や~く~」にスピードが落ちてしまう。
遂に「ハ ヤ ク~」となり「ハ~ヤ~クゥ~」と何を思っているか俺も分からなうなっていた。