2010/07/08
リサイクルショップをやってからは、それまで知らなかったような人たちと数多く知り合った。
俺も普通に生きて生活しているのだが、それは一般的に生きるという意味である。
仕事上の付き合いや交渉相手という面から考えると、その仕事の業界での範囲ということになってしまっていた。
だから仕事上で考えると、今考えると限定的で狭かったと思える。
そんな程度の人々との付き合いだからしょうがないけれど、業界的な常識も一定の範囲にとどまっていた。
ところが世の中には本当に予想外だったり想像外のことをする人もいるんだと驚くのだ。
彼は便利屋さんだ、かれこれ10年の付き合いだ。
半年に1度くらい店に来て、商売よりも世間話をする程度の仲である。
今日はどういう訳か手土産を持って来たんだ。
「温泉卵、食べて」と透明の卵パックに10個入を差し出した。
「アレッ、珍しい」と俺が驚くと、「頼みがあってさ」と下心をチラつかせた。
「ウン・・温泉卵か?」と俺は話を外した。
「大きいのと小さいのがあってさ、互い違いに入れないと入らないんだ」とパック詰めの説明をする。
よく見ると、卵は確かに大きさが微妙に違っていて、交互にパックに収まっている。
「今度ね・・ちょっと遠い場所で仕事があるんだが、見積したんだけど・・・来てもらえないかな?」。
「どうして凸凹的に入れてるんだろう?」と疑問が出た、普通は同じサイズを揃えるから。
すると「大きいヤツだけだとパックが閉まらないのよ、小さいヤツだけだとブカブカするのよ」と即答してきた。
「でも、それは変な売り方だね」と更に俺は疑問を口にした。
やおら彼は言った。
「俺が作ったの、趣味で、だから分かるのよ、温泉場に行って作るのよ」。
「温泉卵を?マジッすか?ホントに作るの?」と疑問を連発した。
「茹でるコツを掴むまでしばらくかかったけど、今は一発で上手くいくようになったけど」。
「ど、どうしてそんなことするのよ、そんなに好きなんですか?」突っ込みたくなった。
「だから趣味なのよ、わざわざ温泉場に行くんだもん、俺のは美味いよ」と自慢した。
彼が帰った後に俺は食した。
確かに殻を割って中身を取り出すと、トロ~リとした黄身が皿に落ちた。
醤油を少し指してゴックンと呑み込む、夏バテに効けば嬉しい。