リサイクル親父の日記

第24話 そんなノンビリで大丈夫、ビストロってレストラン? 

2010/07/13

ビストロとは、レストランや居酒屋を意味する言葉だ。
聞き慣れない俺には、ちょっとカッコイイ感じがするし、ヨーロッパを思わせる。
そのイメージを抱かせるので、開店したら一度食べに行こうと思った。

青年が俺の店にやってきたのは、かれこれ数か月前だった。
彼は店内を隅々まで時間をかけて物色してたように思う。
そして、何度か質問をしてきた。

「この机は何年くらい前の物ですか?」「このランプは大正時代でしょうか?」と主に古さや年代を聞いてきていた。
「古いものが好きですか?」と俺は聞いた。
「特に・・今度、レストランをやるんで・・それで探してるんで・・」と控えめに答えた。

「独立するんですか、この時代に。やりますね、どんな店ですか?」と興味が湧いたので質問攻めにした。
「ま、ビストロって感じで、民家を改造して、古い家なんで、レトロっぽくしようかと・・・」。
「街中だし、面白そうですね、開店したら行きたいですよ、俺も」なんて軽くノッた。

その日は何も買わなかったが、1週間後に今度は女性と二人で来た。
様子から察すると、女性が主導権とお金を持っている感じがする。
彼が店内のあちこちの品物を案内して説明する、それを女性がジャッジしているが了解を得られないのだ。

そんな繰り返しが、あれからもう2ヶ月間も続いているのだ。
俺は毎回同じ質問をするのが憚れるし唯見守っていた。
すると彼が意を決したように「コレください」と1~2点をレジに持って来た。

ステンレスのバット1つ、タオルウオーマーだった。
「赤い掃除機は無くなったんですか?」、俺は「それは今日午前中に売れましたよ」と答えた。
「惜しかったな、欲しかったのに」と大変残念がるのだ。

「もう開店したんですか?」と聞いた。
「いゃ~、こんな調子で準備してるんで、何時できるか分からないんです」とはにかむのだ。
「でも、時間がドンドン過ぎて、勿体ないんじゃないの?」。

「自分たちで全部やろうとしてるんで、だけど、上手くできなくて、難しいっすね」。
「改造、改築工事を自分たちで素人でやってるの?」と追及した。
「えぇ~、工事を全部です、もっと楽勝かと思ってたんですけど・・・」としょぼんとした。

俺も店で会ったお客さんの何人かが独立するって言ってたのを思い出す。
大工仕事や内装仕事まで範囲を広げた人は、工事を大概手間取ったり、遅れたり、やり直ししたりしている。
素人だが大工道具を揃えてちゃんとやった人もいるけど、よく聞くと特殊な個所や難しい工事はプロに頼んでいた。

素人ができる簡単な工事に特化して自分でやっていてのだ。
やり直しに時間がかかるし、仕上がりが悪いから、それはレストラン経営にも影響するかもしれない。
俺は小洒落たビストロには行かなくてもイイやなんて思えるのだ。