リサイクル親父の日記

第28話 仙台には誰も住んでないから・・・

2010/07/17

突然の電話であるが、時々似たような問い合わせがあることはある。
「独り暮らしの父が亡くなって片付けをしている、ついては、古いものがあるがどうだろうか?」。
こんな文言も似たり寄ったりだし、その後の進捗も似るものである。

買取に行く予定を問うと、「今日の午後には東京に戻るし、後は月末に来るけど、早く片付けもしたいから・・・」と言う。
電話で話しながら俺は思う、いつかと同じパターンだなあ~。
「それでは直ぐまいります、その方がお互いにイイと思います」と促すと、「そりゃ、助かるよ」と予想通りの反応だ。

仙台市宮城野区原町は国道45号線北側一帯で、古い街並みのため道路は入り組んでて狭いのど心配もあった。
地図で調べると幹線沿いで敷地が広めだったから、俺の不安も吹き飛び、逆に買取に期待が湧いたんだ。
築50~60年くらいの平屋の家は古色然として昭和レトロがムンムンである。

俺と同年代の男性と女性が二人で片付け真っ最中である。
玄関脇の小部屋には珍しい物が詰まっているが、その部屋はスル―して三間続きの和室に案内される。
「この掛け軸に・・この辺の壺など・・どうですか?価値ありそうですか?」と男性が言う。

電気は止めてあり、日中だが昔造りの家には外の光が入り難く、それに小雨だから薄暗くて検品などできない。
懐中電灯を頼りに物色して、縁側に移動してから、検品を試みる。
二人は亡くなったお爺さんの子供たちで、他の兄弟も全員が現在は仙台を出ているのだ。

「父は昨年亡くなってしまい、そのままにしてたんですが、今度この古家を借りたいという人がいましてね・・・・」。
最初は解体かと思ってたが、最近のレトロブームなのか借りる人が出たとは不思議な気もした。
しっかりした平屋だから構造は問題ないだろうけど、設備や間取りはやはり使いづらそうに思える。

「それなりに古いもので状態はイイとは言えないが、商品にはなります」と俺は伝えた。
その後と彼は言う、「他には価値のありそうな物はありませんか?どれでも構いません、どうせ処分するんで・・」。
それではと、俺は家の各部屋を物色することにした。

彼らが選んでくれた物以外の机や戸棚、火鉢、古い本などを選んでいると、声をかけられた。
「これはどうですか?」、しかし、素人さんが勧めるものと俺が欲しい物は微妙に違うのだ。
「この部屋のは我々の物でして、兄弟が持って行くんです」と説明されて、チラ見した時に欲しくてしょうがないけど諦めてと。

古い本が本棚にあったので、俺はどれくらい古いかとペラペラめくったりした。
「お父さんは学校の先生ではないですか?」と彼女に聞いた。
「・・えぇ、でも、どうして分かるんですか?」と怪訝な顔をした。

「餅は餅屋ですかねぇ、というか、難しくて勉強関係の本がいっぱいですから」。
さっきの机もオーダーメイドさせたと言っていたのが納得できたのだ。
80歳から90歳くらいの父上だったろう、想像だが厳しい頑固そうな先生が思い浮かんだ。

ご自分の尊厳を持ち、子供たちには自由に自立させて立派に務めを果たしだろう。
それは俺の理想の晩年でもある。
俺の子供たちも全員が東京方面だな、俺もここの父上と運命を共にしそう。