リサイクル親父の日記

第30話 この店って、仙台のあそこにあった店でしょ?

2010/07/19

俺の店からさほど遠くない場所にあった店がある。
車で走ると距離的には大変近いから、ある意味でライバル店である。
6~7年前頃からリサイクルショップの勃興が起きて、その波で出店して5年経っていた。

リサイクルフリークにはこの地域は密集地域であり、何処の店にも短時間で出かけられるから嬉しい限りであろう。
開店当初に俺は1~2度リサーチに行ったことがあるが、脅威は感じなかったけれど心穏やかではなかった。
理由は、競合店が増えるほど買取が各店に分散してしまうからだ。

増え続けるライバル店を防げるわけはないから、毎年減る買取に指をくわえているだけだ。
あの手この手と戦術を弄するも、ジリ貧に変わりはないという現実を耐えている。
人伝に聞いたが、あの店が昨年秋に閉店してしまったのだ。

わざわざ確かめる必要もないけれど、でも稀にその店の前を通ったら、やはり空き店舗の看板があった。
それは嬉しいことではなくて、明日は我が身かも知れず、俺もしっかりと頑張らないといけないと自覚する機会だ。
それに1店が減った増えたと一喜一憂する場合ではなくなっている大激化の状況なのである。

おばちゃん二人が店に来た。
二人の会話が耳に入り、内容から察すると始めて俺の店に来たことが分かる。
「この火鉢いいけど高いわ」「面白いのがいっぱいあるね」「欲しいけど・・・」など・・・

男でも女でも複数で見てて、どの品物にも感想を言い合う人たちがいる。
気兼ねせず言いたいこと言うのだろうが、俺も店の人間として、時々、非常識な会話に腹も立つことがある。
しかし、それはそれであり、無関心を装うのが常態であると俺も少しはマシになっている。

おばちゃんが突然声をかけてきたので、それが唐突過ぎて俺は少し驚いた。
「おんちゃん!おんちゃん、この店ってさ、仙台のあそこにあった店でしょ!?」と一気にまくしたてた。
俺は、「??・・はぁ~・・?」と怪訝な表情をしたはずなのだ。

「そうよね、絶対そうよ!間違いないわ、置いてる物がなんとなく似てるんだもん」と思い込みが強いのだ。
「・・・」俺は説明する気になれなかった。
すると、「どうして移ったの?そっか~、ここの方が広いしねぇ、駐車場も広いし、いつ引っ越したの?」。

いい加減なことを勝手に思い込まれるの困るけど、その噂をまき散らされるのはもっと困る。
「ウチは10年もここでやってますよ、お客さんの言った店は潰れたんですよ」と教えた。
普通の人はこれで済むのだが・・・

「おんちゃん、同じ店よ、何言ってるのよ!」と譲らない。
もう説明のしようもないし、無駄な努力である。
俺は椅子をクルッと回して壁を見た。