リサイクル親父の日記

第37話 製氷機が氷ができないって?仙台の蕎麦屋さんが・・・

2010/07/26

不特定多数のお客さんがいるから、誰がだれかは憶えている訳はないのだ。
しかしビジターの中にも何かの印象が残る場合もあり、その後に見かけて思い出すことがある。
1ヵ月前に父と息子で来た、父親は短髪白髪、息子は30代中で痩せていた。

父親は寿司屋を長年やっていたが、息子には蕎麦屋をやらせると言う。
居抜の店を買って準備しているが、製氷機が無いので探しに来たのだった。
偶然というと大げさだが、1台在庫があった。

仙台市内のリサイクルショップを探し回ったのだが、価格が合わずに方々探し歩いていたようだ。
この手の業務用機械は専門店だと結構な高額で売っているが、俺の店は稀にしか在庫が無いので価格もそれなりに安い筈だ。 
それを見つけた人は9割以上が買ってくれる傾向があり、裏腹に欠品状態が多いのも事実だ。

総合的に何でも扱うが、同時に何でもある訳でもなくて、ある物があるだけでもある。
父親が再度店にやって来た。
人懐っこい顔に俺は見覚えがあったが、詳しいことは忘れてしまっていた。

彼は俺の方を見ている、俺も見た、顔と顔を見合っているが、俺は思い出せないでいた。
ニコッと笑顔を作るが、腕の金のブレスレッドが少し記憶を蘇らせてくれた。
すると彼は「まだ、これは売らないよ、蕎麦屋は繁盛してるよ」と言ったから、記憶は完全に復活したんだ。

笑顔、ブレスレッド、蕎麦屋・・・そうだ、製氷機を買った親子だよ。
「蕎麦屋が繁盛で、良かったですね」と相槌を入れた。
「うん、息子も頑張ってるよ」。

「あれさ、氷ができなくてさ、弱ってさ・・・」と話し始める。
俺は故障でもしたのかと心配になる。
「・・そしたらさ、スイッチ入れてなくて、最初は水のまんま出たもんでさ・・今はバッチリ氷できてるよ」。

「扇風機あればと思って来たんだ・・・」と目的を言った。
しかし在庫は1台だけで、尚且つ古めだったから、彼は冷風扇を選んだ。
帰り際、「ナタがある・・チェンソーも・・」と興味を示す。

庭には植え込みが相当広がっていて、その手入れが趣味であり、時には植木屋も使うと言っている。
「ちょうどイイや、これも買うわ、蕎麦屋が順調だし、ブレスレッドも売らなくて済みそうだし」。
最初に来た時に、俺はブレスレッドとネックレスを見て「買わせて欲しい」と申し込んだのだ。

粋な寿司屋の父親、彼は答えた、「蕎麦屋が上手くいかない時は売るよ」っと。