2010/08/04
どうやら何か所ものリサイクルショップに電話で問い合わせをしたようなのだ。
「仙台の宮城野区の者だが・・・ちょっと聞きたいが・・・あの・パイプは・・・買取・・・
ゴホッ、ゴホッ・・すまん、すまん・・咳が出ると・・ゴホッ・・・止まらなくて・・・」。
お爺さんらしいのだが、聞こえ難い声に時々咳き込むから、話が分かり難いのだ。
「えっ!何ですか、パイプって、どんなパイプですか?」と俺は大きい声で聞いた。
「ゴホッ・・タバコを吸うパイプ・・だよ・・おたくの店では・・・買い取って・・くれるのか?・・」。
禁煙運動が大きくなり、喫煙家は肩身が狭くなる一方である。
灰皿、高級ライターなど喫煙具は売れ難くなっているし、ドンドン値下げしても状況は改善しない。
「何軒か聞いたが・・・買わないって言われた・・・だから・・・パイプが12~3本・・あるんだよ」。
俺は、「物次第でしょうね、物が良ければ買うが、安くしか買えませんけど」と答える。
「分かった、場所は何処ですか?」と聞いたから、店の場所を伝えた。
数日経って、俺はそのパイプの話を忘れていた。
店の入り口から人の足音以外にカラカラと車輪の音がした。
年配の夫婦が歩いていて、お爺さんがツカツカとレジに寄って来てた。
その下方で車輪が回っていて、引き台車に小さなボンベが乗っているのだ。
お爺さんは俺に、「パイプ・・持って来たよ」と言って、ビニール袋包みをカウンターに置いた。
数日前の電話を思い出した。
お爺さんの鼻穴二つに透明ビニール管が入ってて、顔面に沿って管が首に降りて、更にボンベに達していた。
「それは酸素吸入ですか?」と優しく聞いた。
「・・うん、そうだよ・・・だから・・タバコは吸えないよ・・」ションボリ答える。
パイプを検品すべくカウンターに並べる。
様々な形状があり、イギリスやフランス製がほとんどで、アメリカ製コーンパイプも1本あった。
他に6本掛けパイプスタンドとパイプ掃除金物もある。
しかし愛煙家だったことは、吸い口がかなり傷んでいるから一目瞭然だった。
「買っていた国分町の店が引き取ってくれというが、・・・知り合いだし、嫌だしな・・それで・・・」。
知り合いに売るのを嫌う人はいる、それは体面を気にする心理らしいが、俺にも分かる気持だ。
お爺さんの希望値はホドホドだったし、売れないことも無いだろうと思って、買い取りした。