リサイクル親父の日記

第53話 シミも模様だってさ、凝視したけど・・・

2010/08/10

仙台市中心部の南側に若林区河原町という地区がある。
新旧混在してて、白壁の商家も幾つか残っていて、ある種懐古調の趣がある。 
旧国道4号線と新幹線線路に囲まれた地域でり、道路は整然としているが、道路幅が狭いのが難点でもある。

そのマンションは新しいのだが、トラックが入るほどの駐車場は無くて、隣家を気にしながら路駐するしかない。
狭い敷地にギリギリ建てられていて、エントランスは無いに等しく、オートロックのインターホンも外壁に設置されている。
ガラス戸が開いて2歩進むとエレベーターだから、こんな合理的なこともない。

1ルームの賃貸マンションのため7階でエレベーターを降りると、各室のドアーが異様に狭い間隔で見られる。
引っ越したばかりの彼女はソファーを示して、「これなんですが・・どうですか?」と聞いてきた。
「あれっ、シミだらけでしょ?これでは~」と俺は否定した。

1人掛け両肘付きの角ばったソファーだが、麻系布地でベージュ色、使用感もなく全体では問題が無いようだ。
しかし、ベージュの中に小粒の点々が無数に見える、それが椅子全周面に渡っているし、クッションの全周にあるのだ。
粒々のシミがこれほど全面に多数あるのは初めてだった。

「これはシミじゃないんですよ、模様なんですが・・・」と彼女が説明する。
疑う訳ではないのだが、俺は未体験のことで信じられない思いだった。
再度「本当ですか?」、と言ってしまった。

「買った時からこの模様です・・ここへ持って来たけど、部屋が狭くて、邪魔になったんです」と弱々しく訴える。
疑う訳ではないのだが、信じられ無いから確認したいのだった。
目を凝らして見る、裏側も、脇も、クッションもひっくり返して全ての面を凝視した。

なるほど、シミと思えた粒々というか点々も一定の規則に沿って並んでいるようでもある。
シミやカビだったら不規則であり乱れているし、大きさもランダムだし・・・
あまりややっこしい模様やデザインもいかがなものかと、1人で文句を言ってしまうありさまだ。

そんな検品を済ませて、部屋から運び出して、エレベーターで降りて、路駐のトラックに急いだ。
ちょっと動くと汗が滴り落ちるが、折角の商品に俺の汗が染みたら大変だ。
本当のシミを作ることは洒落にならないからね~~、汗はタオルで拭ってと・・・

拭う汗はそれでも滴り、遂に俺の目に入るのだ。
「シミ~るぅ~~」。