リサイクル親父の日記

第61話 2度目でそんなに愛嬌がイイなんて、下心がアリアリ

2010/08/20

店に入るなり、ニコニコしてこぼれんばかりの笑顔ってやつで、俺の方へ突進してきた。
見覚えあるようなないような、直ぐには思い出せないのだった。
そんな俺の思いをよそに、彼女は意に介しもせずにどんどん進んで目の前までやって来た。

「社長さ~ん、先日はどうもぉ~~」ととっても甘ったるい声色です。
「はぁ~、どうも・・」と一応俺は相槌を打ったが、しっかりとは未だ思い出せない。
「イイかしらぁ~ん、やっぱり、又、お願いしたいの~~」とハンドバックから貴金属を取り出した。

「四国への旅費代に買っていただいたわ、助かったのよ、本当にありがとうございました・・・」。
他所で買取見積もりをしてもらったら安くてと、俺の店に来たんだが・・・
聞けば、その査定価格が低いのは事実だが、俺も商売だから、実直査定で買取させてもらった。

彼女にすれば、数万円の違いは大きいから、俺の買取金額に物凄く喜んだ筈だ。
その時には数ある中の一部だけを売り渡して残りは取り合えず保留した分があった。
今、彼女は保留分の中の一部を俺に示した。

以前と同様に高値で買取をして欲しいのは山々だし、その為に作り笑顔も惜しみなく演じるのである。
俺も女性から嬉しい褒め言葉をいただけるのは気分が悪くなく、むしろ気分がとってもイイ感じ。
「やっぱり、こちらが一番信用できるし、誠意があるし、社長さんの人柄も・・・・」と俺は舞い上がっちゃうのだ。

妙齢の女性から笑顔満面にデレデレのお褒めときたら、俺の鼻の下はビローンビロビロと伸びきった。
「えぇ、特別なことはしてませんから・・・唯、一生懸命やってるだけでして・・・」。
「そんな謙遜なさって・・・よろしくお願いしま~すね・・」と殺し文句がきた~。

キャバクラ?以前はクラブとかスナックとかに行ってたもんだが、その時に似てるな~って思った。
「もう一杯いただいてイイかしら?」「ボトル入れますよ」「フルーツもらってください」そんな言葉にアグリーしたもんだ。
女性の頼みには弱い、イイ恰好したいから無理して、やせ我慢して奢ったりしたもんだ。

その時は俺が下心がアリアリだったから、今目の前では正反対の状況である。
でも、商売だからと冷静になる、ように心掛けて・・・査定しないと。
「先日くらいにはなるでしょうか?それだと嬉しいし、助かるんですけど・・お願いします」。

そんな私情を挟むことは御法度です。
「今日の相場は・・この間より高いですね、良かったですね」とネットの相場を伝えた。
「あ~ん、やっぱりィ~嬉しいわ!!」笑みの中に皺がクチャクチャとうねった。