リサイクル親父の日記

第82話 「刀、何ぼで買ってくれる?」とおっさんが飛び込んできたが・・・

2010/09/11

仙台でリサイクルショップを始めた頃、近所のお爺さんと友達になった。
お爺さんは細々とした年金暮らしである、自由時間は有り余るほどある。
歳の離れた奥さんとのアパート暮らしで、子供はなかった。

奥さんはパートに出てたから、お爺さんは毎日自転車で俺の店に来てた。
店に鎮座してると、知り合いの人がお客さんとして来る時もあり、愛嬌良く接客をしてた。
気持のイイお爺さんで、俺は邪険にはしないで、昔話を聞いてやったりしてたんだ。

5~6年前から時々入院することがあり、車イスの生活になり、それでも時々店に遊びに来ていた。
3年前に寿命には勝てずにあちらに行ってしまった。
奥さんは必要な物があると店に来るが、年に1度くらい。

先日、俺は見覚えが無いのだが、おっさんが店に飛び込んできた。
「・・あのさ・・刀、刀あるんだが幾ら、何ぼで買ってくれる?」と素っ頓狂な声で聞いてきた。
意味が分からず、どういうことですか?聞き返す。

すると「あの人さ・・刀、詳しい人さ、いないの?・・お爺さんで、ここの会長だよ・・・」と答える。
押し問答してて分かったのは、おっさんはお爺さんのちょっとした知り合いであった。
5年前に俺の店で偶然お爺さんに再会した時に、買取するよ、と言われて、それで思い出したのだ。

関係は分かったが、おっさんの言う刀はどんな物か不明である。
「今、刀を持ってきてるんですか?現物を見ないと値段は分かりませんよ」。
「俺の知り合いの刀があるんだ、何ぼするかで・・値段を知りたいんだよ」と息巻く。

高額品ほど相場は下落している。
刀は男性の趣味であり、不況で小金持ちの男性が四苦八苦だから下落は大きい。
刀は千差万別、ピンからキリまである、物を見ないで値段が言える訳なが無い。

店の常連さんを今回の様に間接的思い出すことがシバシバある。
そういう思い出に時々浸る鎮魂。
俺の心の中で、今もお爺さんがニコニコしてるんだね。