リサイクル親父の日記

第91話 知合いの外商さんから・・・それは俺がやりましよ

2010/09/20

リサイクルショップをやってから知合った人がいる。
時々各地のデパートの催事に出店する人で、俺はデパートの外商と憶えている。
作家物の茶道具やら美術品を商っているので、方々のクライアントを訪問して販売するらしい。

クライアントは金持ちであり、扱い商品も一級品だけだから、俺なんか足元にも及ばないのだ。
7~8年前に破産した会社の動産処理を紹介してもらったし、2年前には象牙を買取させてもらった。
普段は月に1~2度ブラッと来て、茶飲み話をして帰って行く程度の付き合いだ。

彼が夕方ケータイで、「屏風の買取する?午前中電話があってさ、東京で数年前に買ったらしい・・・」。
彼の得意分野は勿論直接やるが、やらない物の場合には俺に振ってくれるのだ、その確認電話だった。
「住所がウチから近いし・・明日でも行こうかと・・」と説明が続いた。

俺は今日の昼過ぎに買取に行った先を思い出していた。
「ちょっと待って・・買取場所が似ているし、屏風って言ってたの・・・東京で・・」と俺は復唱する。
「うん、マンションだよ、エッ、おたくでやった、済ませたの?」と彼は驚いた。

どうやら手当たり次第に電話して、直ぐに来てくれる店を探していた。
そうして俺の店にぶち当たり、暇な俺は場所が近いから飛んで行ったのだった。
偶然とはまことに面白い、事実は小説より奇なり。

実はその屏風の買取先では、もっと凄いことがあったんだ。
俺がマンションの部屋のドアーを開けて入りかけたら、エレベーターを降りてスタスタと歩いてきた女性がいた。
無言で無表情で強張った刺々しい態度、俺の先の部屋に行くかと思いきや、当然の如くに半開きのドアーに入って来た。

靴を神経質に並べて廊下を進んで行った。
彼女がそこの奥さんらしいのだが、俺がいるのも無視、何も居ない空間を歩く様にである。
その時、買取依頼者の夫の男性は廊下にいたんだが、二人とも言葉も交わさないのだ。

この白々しい冷たい雰囲気と険悪な夫婦関係は無縁ではないだろう。
彼が東京で大金を払ったかも知れないが、俺はそれが中国製で大量生産された物だと一目で分かった。
元の値段からは査定はできないし、店で幾らだったら売れるか考えて買取金額を算出する。

このようなケースでは、電話で安くしか買えないでしょうと伝えておくようにしている。
そうしないと交渉が不調だったり、査定金額で怒りだす人もいるから、無用なトラブルは事前に取り払っておくのだ。
「一杯飲めればイイ」と粋がっていたが、「妻と相談するから」と居間に引っこんで行く。

しばし玄関で立って待っていたが・・・・
「もっと高くしてくれって・・・」と彼は妻の意向を口にした。
「それは無理です、電話でも言ったでしょ?」と俺は突っ張ったのだ。