リサイクル親父の日記

第94話 海の家やってたんだ、倉庫片付けを・・・

2010/09/23

火鉢と豆を砕く手動ミキサーを持って店にやって来た男がいる。
ミキサーは農家が味噌を作る時に使用した物だろう、ちょっと前まで自家製があったからね。
買取はしたが、その後に男は「まだ色々倉庫にあるんだが買取に来てもらえないか」と聞いてきた。

リサイクルショップは出張買取が大切だから話を進める。
仙台市若林区荒浜という場所で海水浴場がある。
「以前、海の家をやってたが、その時の物が結構あるんだ、それに仙台ダンスもあるし・・・」

古い家並みの地域は道路がやたらに狭い、乗用車がギリギリだが何とかその家に着いた。
敷地は変形で広くて、少し傾き加減の平屋の古い家があり、そして納屋が接している。
正対する向かい側に井戸を挟んで別棟の小さなトタン張り倉庫があり、物が溢れんばかりに詰まっている。

その中から男が掘り出すように探して箱入りの物を俺に渡してくる。
花瓶、エアーポット、大き目の鍋、焼き鳥台、おでん鍋、真鍮鐘などだ。
なるほど海の家の面影が窺える。

しかし、業務用の品々はあまり使用感は無く、但し20年も前の状態で保たれた感じがした。
納屋の前に火鉢が物入れとして置いてあったりもする。
聞けば、海の家は1~2年しか営業しなかった。

そんな時、見知らぬ中年の営業マンがやって来た。
男に営業マンが言ってることが聞こえていた。
「瓦はイイもの使ってますね、でもそろそろ修理した方が・・・見積直ぐ出ますが・・」

直ぐに男は営業マンを追い返しのだ。
そりゃそうだ、この古屋は屋根を修理するよりも建て替えをした方がベターなのである。
最近はやりのリフォーム詐欺は何処へでも出没するんだと思えた。

「20~30年前に仙台ダンスを買いに来た人がいたんだ、当時で何十万出すって言ってたらしい・・・」
俺はその仙台ダンスが実は大変興味があったのだ。
「ところで仙台ダンスは・・」と促した。

男が母屋の玄関を開けた。
直ぐに薄暗い茶の間があり、コタツの両端に二つ小山の様なものが見えた。
薄暗い中で目が慣れて、ヌーッと見えた老人二人に、俺はギョッとしてしまった。

男の母親であろう老婆が笑顔なのが救いであった。
続き間の仙台タンスは仕込みタンスであったが、価値はほとんど無かった。
「その時、売っておけばよかったのに・・・」と言いながら、俺は意気消沈してしまった。

数十年前にタイムスリップした感覚である。
小さい頃に目にした光景、ガミガミ怒ってばかりしたひい爺さんがコタツで丸くなってた。
40~50年前の体験が蘇ったんだ。