リサイクル親父の日記

第128話 デイトレやってんだよ、へぇ~とビックリしたんだけど・・・

2010/10/28

「骨董品を買取するのか?」と飛び込んできた中年男性がいる。
顔が引きつっているのか緊張感が漂っている。
リサイクルショップだからあらゆる種類を取り扱いするが、先ず物の内容を聞くのが手順だ。

「どんな物ですか、古さはどれくらいですか?」と聞く。
「親父が集めた物で、うんと古いんだ、こう丸くてさ、黒くて、重いんだ」と両手で円形を作る。
品名を言えないらしく、質問にはシドロモドロしている。

「物を見て査定しますよ、持って来てください」と言ったら、車からそれを持って来た。
最初から持ってくれば済むことをと思ったが、少し面倒くさそうな男だなと感じた。
「これは高く売れるよ、儲かるぞ」と根拠も無く断言するから、俺は呆れるだけだ。

鉄製の火鉢の一種だった、火鉢は高く売れる物ではない、幾らでも世間にはあるのだ。
売り込みセールストークが突出してる、「イイ物だ、高い物だ、儲かるぞ」を飽きずに連発してる。
見え見えのセールストークにはだんまりを決め込むようにしている。

「幾らで売りたいんですか?」と彼の希望値を聞いた。
「5千円、安いだろ?買えば大儲けできる筈だ」と息巻いた。
「すいませんが、ウチは買えないから、他所へ行ったらいかがですか?」とかわした。

「それじゃ、3千円」「2千円」「1千円」と俺が首を横に振るだけで、彼は下げていくのだ。
その後、同じ調子で数回彼は売りに来るんだが、ワンパターンのネゴが交わされるのだ。
昨夜は大分気心が知れてきたので、ズバッと聞いた「仕事は何やってるの?」

「オレっ、デイトレだよ、他に一つ二つやってるよ」と引きつった顔つきで答えた。
「デイトレって、FXとかもやってるのかい?それじゃ大儲けしてんじゃん、こんなの売っててもしょうがないんじゃない」
俺は皮肉を込めて言ったのだが通じないらしい。

「う~ん、この時代だから儲かんないし、それで夜には運転代行もやってるよ」
俺は理解できなくなったしまった。
デイトレであり、運転代行や他のバイトもやっていて、親父の残した物をチビチビ売っている。

「トークが上手だし、何か定職はやってないの?」と蒸し返した。
「前には営業やってたから、口は上手いんだ」と変な自慢をする始末。
「いろいろとあっちこっちへ売っているんじゃないの、余った物をウチに持ってきてるんじゃないの?」

バツの悪い顔をして横を向く。
「まぁ、又、来るからさ」と店を出たんだ。
数年前に友達がFXをやれと、裏のFXに参加しろと誘ってきたことがあった。

当然だが、それは出資法違反行為であり、心配した俺は友達を諭したことがあった。
それ以来、友達は俺の前に現れなくなった。
彼はどうなったんだろうかと気になった。