リサイクル親父の日記

第134話 余裕は有り過ぎぃ~ですね、有効期限切れってことで・・・仙台のお金持ちぃ~

2010/11/04

リサイクルショップとして出張買取見積もりに行く。
どんな仕事でも見積したから必ず仕事がまとまるなんてあり得ないし、ケースバイケースである。
調子がイイというか、運があるというか、上手いくいくとが続く場合もあるし、サッパリなんてことも続くこともある。

但し、今、政府がやっている「事業仕分け」対象の様な随意契約でもない限り、上手くいくことが続く筈も無い。
仙台は街が大きいので色んな買取案件が舞い込み、見積も多種多岐に渡るから変化があって面白いのも事実。
反面、俺の店では扱いきれない程の莫大な数量で手に負えないことも有り残念無念だったりもする。

俺の店にあった規模の買取がそうそうある訳でもないから、1個でも出かけるし、膨大でも出かけて、取ってか処方を練ったりする。
今年春に中年の夫婦がフラ~と店に来た。
実は別のリサイクルショップを探したのだが、迷いに迷って、仕方が無く俺の店に寄ったそうだ。

経営していた会社を手放して、同時に10年目に新築した立派な家も売却する予定がある。
子供は東京で独立しているから会社を継がない、家は広過ぎて掃除や管理が面倒になっている。
賃貸マンションも持っているが、それは賃貸を継続しておいて、新たに夫婦だけの生活に合うマンションに引越すという。

その事情を聞きながら俺は思った。
何とも優雅で裕福な余裕のある話だと、さもしい俺は感心と羨望が出た。
「あの店でなくてもイイから、おたくも出張見積もりしてくれる?買取してくれますか?」

「えぇ、勿論、見積できますし、ただ、お知り合いの店の方はよろしいんですか?」俺としては丁寧に聞いた。
「特別な関係はありませんのよ、随分昔に買取してもらったことがあっただけ、だから構いませんのよ」
どうも貧乏性の俺には、お金持ちの言動の波長に齟齬の様な感じを受けてしまう。

翌日、仙台市中心部の旧市街、道路が一通で狭い、来客用駐車スペースはあるが乗用車がやっとだ。
吹き抜けが大きくて陽光が眩しいほど降り注ぎ、明るい広々とした玄関。
ロココ調の飾棚に西洋陶磁器が上下左右無数に思えるほど並んでいる。

広いリビングに6人掛けイタリア製ダイニングセットがピッカピッカの猫足を見せている。
そして隅々とコーナーにはロココ調家具が設えてある。
上等なホテルのサロンかロビーを小じんまりした感じを受ける。

椅子を勧められて腰を下ろすと、奥さんは席を立ちキッチンへ、旦那さんと挨拶と取りとめのない会話を交わす。
奥さんが暫し時間をかけてドリップコーヒーを淹れて、高級そうなケーキを添えてくる。
これは時間がかかるぞ、俺は覚悟を決めて談笑することにした。

お二人の会社経営の考えや経済情勢、家族のこと、老後の暮らし方、友達のことなどを延々と話すのだ。
遂には、俺のリサイクルショップについても矢継ぎ早に質問を浴びせてくるのだあった。
俺は真摯に受け答えをしたし、機嫌を損ねないように注意もしたし、それで、神経が大変疲れちゃったのだ。

「・・そろそろ、見積をお願いしたと思いますが・・・」控えめに言った。
「そうですわね、2階からお願いできますか?」やっぱり齟齬が・・・
1点毎に思い出と買った店と経緯を話してくれるから、長時間を要した。

「小物関係だけでも早く持って行って欲しいのよ」と希望した。
「でも、まだお住まいになるんでしょ?」と聞いた。
「来週に東京から戻ったら、その時にお願いしますわ」と言うので、電話を待った。

電話が何時来てもいいように俺は段取りを考えていた。
洋食器に花瓶や焼き物が段ボール箱にして20個以上はあるから、包み紙に入れ物、人手などを手配する。
1週間待ったが電話がない、更に、1月過ぎても・・・

時々、思い出したのだ。
他所に売ったのかな?
と、思っていたら、先日、電話があったのだ。

「憶えていますかぁ~?直ぐに片づけたいので、来週来てもらえませんかしら?」
この半年間は何だったんだろうか?
俺は1人で吹き出してしまった。