リサイクル親父の日記

第141話 ガソリン代を受け取ってよ、それはできませんと・・・

2010/11/11

リサイクルショップは何処でも出張買取に行くよ、と意気込んでいる。
仙台がかなり広いのも分かっているが、太白区の外れの外れとなると、やっぱり遠いと実感させられる。
遠方の人は住所を聞いても、直ぐに的確には答えてくれなかったりする。

お爺さんからの電話である。
「壺とか色々珍しいのがたくさんあるんだが、買取できるだろ?」
俺は経験的にちょっと警戒心も出てしまう。

「骨董品ですかね?古いものでしょうか?それにキズはありませんか?」と聞いた。
「あぁ、大丈夫だよ、骨董品ではないがイイ物だよ、全部・・・」
押しの強い言い方であり、この言い方は、下手すると絡まれる可能性もある。

「おたくの店の場所、太白区の東中田か・・XXの所だよな、OOの麻雀屋の近くか?」
「そうですね、お客さんはどちらですか?出張買取に行きますか?持ち込みできますか?」
「太白区だよ、持って行ってもイイが、色々あるしな・・・準備も大変だしな・・・」

壺や花瓶、置物などがかなりあるようだと思えた。
仮に持ち込みしてもらっても、万が一にも粗悪品で買取できない場合を想像したんだ。
その方が厄介だなと思えるから、場数を踏んでいると最悪は避けたいと考える。

「それではお手数ですから、よかったら出張しますよ、その場で査定してみますか?」
「お~、そうか、そうしてもらえれば・・・」
という具合になってしまった。

ところが、場所が仙台市ではあるが隣の群の柴田町に近い境界だったから、俺もショックが大きい。
走行中に思案した。
田舎のやっかいなお爺さんでは、断り方が難しいかも知れない。

到着したら、広い敷地内に数か所に建設関係資材が何重にも重なっている。
やはり建設関係の仕事をやっているお爺さんさんだと確信した。
「おぉっ、早かったな」と自宅内の書斎兼事務室に案内される。

「会社は息子に任せてる、そろそろ片付けでもしようと思ってな・・・・」
机上の棚に乗っている花瓶に壺、飾り物を指さした。
「借金のかたに取った物ばかりでな、何ぼで買ってくれる」

しかし、それらは買取できるものではなかった。
「すいませんが・・・売れ難い物でして・・・申し訳ないのですが・・無理ですね」
「そうかぁ~、何十万の貸してよ、それで、やっぱり騙されたのか」沈んだ表情でぼやいた。

でも、気風はイイらしく、切り替えが早い。
「あんたに迷惑かけたな、タダでイイから持って行きなよ、それにガソリン代だから取っておきな」
と千円札数枚を財布から取り出す。

俺はサッと身体を引いた。
そして、「受け取れません」とお爺さんに対して、やっと毅然として申し入れをした。
「買えるかどうか、商売になるかどうかは、店としての判断ですから、ガソリン代のために来たんじゃないんですよ」