リサイクル親父の日記

第143話 面白いなこの名刺、思わず笑ってしまう仙台のリサイクル親父だよ~

2010/11/13

ある日ある時、初めて来た年配の男性客が、数時間かけて店内を隅々まで物色(?)してた。
リサイクルショップだから売れないと話にならないが、目的は見物的に思える。
時々、こんな感じ、掘り出し物を見つけに来ている風なお客さんはいるにはいる。

俺の店は広くはないから、長時間かけるということは何度も同じ物を見ているということだ。
全ての品物をじっくり見るのではなくて、グルッと周り歩く都度に気になる物を手にとって見定めている。
そして、疑問があると聞いてくる、名称や使い方、生産地を。

やがて時間が過ぎるとスーッと居なくなっているのだ、それが3日間続いた。
初日はちょっと奇妙な感じが強かったが、2度3度となれば俺も慣れてきた。
見て見ぬ振りもできるようになっていたから、すると模造刀を見せてくれと言ってきた。

手に取って、刀身を抜いて、1~2度振ったいたが、「イイなあ」と呟く。
「欲しいけど、取り置きしててくれないか?」と訊ねてきた。
「何時までですか?それと手付金をもらえればイイですよ」と答える。

「今、1千円しかないが、1週間後に残金を・・・・」
俺はその条件で取り置きを了承した。
すると、三つ揃えのスーツの内ポケットから長財布を取り出して開いた。

千円札が1~2枚しかなかった。
そして別なポケットから名刺入れを出して、「名刺だよ、渡しておくよ」言いながら、千円札1枚と名刺1枚を重ねて渡すのだ。
ふと名刺の字を読むと「現金回収業」と記してあった。

俺は眼を凝らして数回文字を確認した。
あんまりたまげた肩書きというか名称に思わず言ったの「凄い商売ですね」って。
「じゃ、頼んだよ」彼はスーツの肩を左右に揺らしながら帰った。

その数日後、親子三人で来ていたお客さんがいた。
2~3週間前から置き物や飾り物を時々買っていたんだが、今日は俺が声をかけたしまった。
「いつもありがとうございます、珍しい物が好きなんですね」

「うん、お婆さんがデイサービスの時しか外出できないのよ、普段は誰かが面倒をみてないと・・・」
聞けば、1時間かけて仙台に買い物などに来るそうで、親子揃っての楽しみのようだ。
彼も名刺を出してきた。

上段に「コーポ XXX」とアパートの名前らしい文字があった。
「アパート持っているんですか?」と聞くと、照れながら頷いていた。
世の中には俺の知らないことがいっぱいあるんだ、と改めて感じた次第である。