リサイクル親父の日記

第208話 これが最後です、明け渡しするんで・・

2011/02/22

業者であれば不用品を何度も出すことがあり、その度に出張することがある。
又は、ランダムに店に持ち込んで来る場合がある。
リサイクル的な不用品は1~2回で済むのがほとんどであり、3回も買取に出向くなんて超珍しいかも知れない。

今日の電話は1ヶ月前に2回出張したお宅からだ。
主にコレクションとしてお父さんが収集した品々で、息子さん夫婦には嗜好が違うのでイラナイ物であった。
息子さんたちの好きな品々を厳選した残りは言うまでも無いが、俺には貴重な物である。

最初に呼んだリサイクル屋は見向きもせず査定が出なかったから、2番手に俺にアプローチがあった。
電化製品や家具は最初の店が話をつけ終わってしまい、俺にはコレクションの残りだけが提示された。
骨董と呼べないが良品で作家物とかだし、俺もある程度の知識ができていたからソコソコ査定を出せた。

「そんなに買ってイイんですか?」なんて息子さんに心配されたけど、俺も利益は出せると踏んだ。
「もう少し片付けが進めば、又、連絡します」と分かれて、2週間後に再度買取してた。
「もう無いと思いますが・・・」、俺はもっともっと買取したいが残念だった。

「以前買取に来てもらった八木山のXXですが・・・マグカップや焼き物の皿や食器を・・憶えてますか?」
「?・・あ~?ハイ、思い出しましたよ」と俺はトーンが急に上がった。
「あの時の蓄音機、それに古いガラス瓶、大きい瓶で銀の蓋が・・・」と言いかけた。

俺は言い終わる前に反応した「あれ売ってくれるんですか?今でも直ぐ行きますよ」
「家の明け渡しがいよいよ近いし、持ってても置く場所がないかも知れないし、それで・・・」
以前目にした蓄音機はできれば買取したい物だったし、ガラス容器は見ていないが、あの家ならちゃんとしているに決まってる。

玄関には大きめの段ボール箱に入って2品がある。
値段交渉は案外アッサリ決まった、俺も前の買取で利益も出てたからソコソコに気を張ったのだ。
一瞬、彼は間をおいたが「い、それでいいでしょう、本当にこれが最後ですから・・」

朝顔のように大きく綺麗に開いたラップ型のスピーカーは、見ているだけで懐かしい思い。
木製のラッパで珍しさも有り、俺は商売抜きに気に入ってしまった。
勿論、手回しハンドルを回してゼンマイを巻くとレコードは鳴る。

上下左右各30cmくらい透明ガラスで綺麗な湾曲線を描いている。
頭部には直径10cm教の円形蓋、鈴製の蓋であり、受け部も鈴製の縁取りだ。
昭和初期の時代があり、ガラスを覗くと景色を歪ませている。

値段が値段だし俺の店では売れそうもないな、といつまでも俺の下に居る運命に嬉しくなった。