2011/02/25
数日前に買取して陳列した蓄音機。
レトロでアンティークでアナログの極みを演じている。
何年も前から常連のお爺さんは、いつもフラーっとやって来る。
ステンドグラスを買ったことがあるし、油絵も買ったっけ、洋物の時代物が好きそうなのだ。
俺は蓄音機が好きなのは知っていたが、もう既に持っているから無理だよなと思っていた。
自家用車はワーゲンの黒、奥さんもブランド洋食器や飾り物が大好きなのだ。
「ヨォ~~」と声をかけてから店内を徘徊する。
家具コーナーを一周し終わるとレジに近づいてくる。
買わなくても、挨拶したり雑談したりするのが習いだ。
「天気がイイねぇ・・」と言い掛けて声が詰まる。
視線は蓄音機に吸いつくと離れない、凝視し続けている。
「これ、いつ入ったの?鳴るの?」
俺は常連さんでもあり、買う気もあるし、買う金力もあるから、「鳴らしてみますか?」
「ウン、頼むよ」と意欲満々だ。
ラッパの取り外し方や音量と回転調整を説明してから、レコードを乗せて回した。
雑音混じりの音が流れ出ると、常連さんも近くに居た他のお客さんたちもウットリとなる。
口々に感想を言い合って、皆が羨望の眼差しとなる。
「買うよ、これは完璧だし、大変気にいった」
そして次に躊躇いつつ言った。
「・・妻に・・帰って相談したいから・・それでイイかな?」
「金額も張るから、ハイ、それで結構ですよ」と俺は了解した。
年金暮らしで慎ましく暮らしているから、高額な買い物はご夫婦で相談した方がイイだろう。
俺も押し付けて売るというのは大嫌いだ。
奥さんに逆恨みされることは勘弁だ。
2日後の夜に電話があった。
「蓄音機を頼んだ・・・どうしてもダメって・・・申し訳ない・・・」
アッという間に売れたと思ったら、キャンセルかな、でも、俺も暫く楽しめるから気にしないでおこうか?