リサイクル親父の日記

第212話 1年もしないで閉めるんで・・・

2011/02/26

仙台市中心部で大通りから一通で中に入った所には雑居ビルやマンションが立ち並んでいる。
古いマンションの1階の1室は40~50坪はあるようで、通りに面して入口があるテナント物件。
喫茶店かカフェと呼べる飲食店は真新しくて清潔で居心地がよさそうに感じる。

「1年も経っていない冷蔵庫や洗濯機、椅子テーブルなど・・」と説明している。
もう少し詳しく知りたくて聞いた、「椅子はどんな感じですか?」
「椅子は飛騨家具なの、高かったわ、6脚あるの、テーブルは全部で5台、ベンチも3台・・・」

初めは普通の引越しかと思ってたが、どうやら飲食業の撤退ではないかと気づく。
「あの喫茶店ですか?すると厨房器具もあるんじゃない?」
「そうです、喫茶店ではないんですが・・・流し台、ガステーブル、冷凍庫も1年も・・・」

物もイイし、それに現品を検品しなければ査定できないから見積に出向いたのだ。
オーブンレンジは1度も使っていない、他の器具も使用感が見受けられないのだ。
「だってぇ、ここ雨漏りして、営業できなくて、お金ばかりかかるからぁ、それで・・・」

聞いた内容が俺には理解できなくて、色々突っ込んでしまう。
つまり、1階は居抜で空いてたから、現状復帰しないことと一切の工事は借主がやるという条件で借りた。
1ヶ月かけて内装や厨房設備を整えた、そして営業開始、ところが雨漏りなのだ。

高層のマンションだから、厳密には雨漏りではなく、上階からの漏水が原因なのだ。
大家は契約条件を盾に、一切借主がやるということだからと責任転嫁する始末。 
2階と1階の間に各種の送水管と排水管があり、それら全部を修繕することは不可能である。

対策しようにもできず、漏水する下方を避けて利用するしか方法がない。
本当に営業した日は半年も無い、聞いている俺も同情したくなる。
「だからリサイクル屋さん、高く買ってくださいな」

気持は重々分かるが、俺とてリサイクルショップという仕事柄、自ずと限度がある。
「金がかかっているのは分かりますが、取り外し工事にも費用がかかるし・・・まあ、精一杯査定しますけど・・」
すると彼女は女を前面に出して、「う~ん、ねぇ~~もう少し、もう少し・・」と実に甘い声。

どうやら前職の癖が出てる甘ったるい声だ。
賃料が安いからと簡単に飛びつくのは問題も有りそうだ。