リサイクル親父の日記

第222話 超リッチがいるんですね、どうして要らないんだろ?

2011/03/09

俺の想像を遥かに超えるお金持ちがいるもんですね。
テレビや雑誌では見聞きするが、身近に接する機会は無いから、俺が魂消るのはしょうがないと思ってください。
普段は下々とか庶民と呼ばれる一般的な人々としか接してないし、セレブな別世界のことは念頭にないしぃ~~~

その結果、そんな人々の言動は正に異次元的に感じてしまう。
同時に金銭感覚のズレにも驚愕せざるを得ない。
仙台市のピカピカ高層マンションの最上階だから、仙台市が一望できちゃう。

こんな眺望は一回経験すればもうたくさんである、何せ高所恐怖症の俺には無理がある。
背中や腰に走るゾクゾクブルブル感は、足がすくんでしまい、眺めを楽しむ気力が萎えるだけだ。
地上に吸い込まれそうな感覚と重力に逆らわなければならない気分は、何ともし難いのだ。

白い大理石張りの玄関床、フローリングも白系、壁も白系で豪華な建材が使われている。
玄関からリビングには広く大きく湾曲した廊下、他の寝室やクローゼット、書斎にも緩い蛇行で続いてる。
方形で仕切られた部屋しか知らない俺には、ここがおとぎの国か宇宙の様な異空間でセレブドラマ舞台そのものだ。

40歳手前くらいの男は、大柄で色白、少しボテッとした感じで上下絹のパジャマ姿、爬虫類に似た目をしている。
「1か月後な、引越すんや・・」そう切り出してから次々に家具類を示す。
リビングの大振りで柔らかくて丈夫な総革張りのリクライニング式2人掛けソファー、異常に重い真っ白いダイニングテーブル、60インチ液晶テレビ、など・・・

重厚で彫刻がある枠に分厚いマットが2重に敷かれたダブルベッド、現代的でモダンで木彫りされたドレッサー、など・・
衣裳部屋とでも呼べばいいのか、その部屋にはダークグレー調のスーツが無造作に数十点ぶら下がる。
グルッと半周をカウンターが付けられていて、その上には五重塔や大きな球石、時代のある仏像などが飾られている。

「これを全部売るのは勿体ないと思いますよ」、品物に圧倒されて俺は本音を言ってしまう。
「いいんや、引越すんやし、高く買うてや~」実にアッサリと言う。
その時、男のケータイが鳴る。

すると、さっきまでとは全く違う口調で話している。
本音と建前、営業口調的な白々しさを受ける。
エレベーターで降りながら俺は思案した。

店での販売を想定して仕入れ買取価格を算出した時に、驚くほどの低額になる。
搬出に大変手間がかかる、高級品ほどその割にリサイクルでは高くは売れ難いし、長期戦を余儀なくされる。
最も注意を要するのは、物が異常に大型なので、部屋の床や壁、通路にキズを付けないかということだ。

次に、男の二面性に恐さがある。
軽く言ってる割に底知れぬ面があり、言動が真逆になることが多いかも知れない。
仮に、間違ってキズを付けた時のことを考えると、賠償請求が幾らになるかとゾッとする。

「ウチでは買取できませんので辞退します」と電話する。
「なんでや~どうして買わない?」憮然としているようだ。
「すいませんが、失礼します」俺は電話を切った。