リサイクル親父の日記

第227話 吸えればイイんです、スイマセン

2011/04/07

あの日から全てがパニクッてしまったから、生活パターンが狂いっ放しです。
電気も水道もガスも使えない生活は、原始体験に近いものであろう。
その縁から一つひとつ回復した時の嬉しさは感動的でもあった。 

水汲みをしなくてもイイ、漆黒の夜に眩い輝き、湯気の立つお湯、流れる映像の数々。
何も無いのが回復していくと同時に、自分が少しだけ人間的になる感じがしていた。
衣食住がある程度回復した時、次に嗜好がムクリと目を覚ます。

ヘビースモーカーの俺は常時タバコを数カートンをまとめ買いしている。
トラックにも乗用車にもバックにも常備しているから、吸いたい時に吸えないのが相当なストレスになる。
あの日から買い置きは減る一方であり、店は全部閉まっている。

数日後に食料の在庫販売をした店にもタバコは無い。
自動販売機は停電だから買えないし、そもそもタスポなんて持ってないから無理がある。
毎日数時間並んで食料を買う、ある日、あるスーパーの店外販売にタバコが見えた。

カップ麺は1人2個、飲み物1人2本、トイレットペーパー1人1梱包とか制限がある。
しかしタバコには制限が無かったから、俺は先々を思うとできるだけ多く買おうと決心した。
やがて俺の番が来たので店員さんにタバコをお願いする。

俺の常に吸う銘柄は人気があるので売り切れていて、しょうがなくて、それでも6カートン注文した。
失望しながら、「・・そうですか・・吸えればイイんです」と弱く言った。
店員さんは、「スイマセン」と答えて渡してくれた。

この非常時にタバコを吸えるだけでも感謝しなくちゃ。
それから1~2週間は愛用銘柄と交互に吸いながら過ごした。
2日前にガソリンスタンドにタバコがあって、その銘柄を見つけた。

「スイマセン、1人1箱ですが・・・」店員さんは平然と言っていた。
たった1箱なの?でも貴重な1箱です。
統制経済とはこんな状態なのだろうなぁ、肥大した俺の欲望は慎みにいつまで耐えらるのか。