リサイクル親父の日記

第237話 立派な家なのにぃ~~~泣けてくる

2011/04/17

「家が地震で・・住めないから解体するの・・・木彫りとかギフトとか色々あって・・・
出張買取に来て欲しんだけど・・・営業してますか?来れますか?」
とても切羽詰まった声で彼女は依頼している。

俺は、古い家が地震でやられてしまって解体せざるを得ず、物を引越し先に持って行けなと感じた。
ゴミにするには惜しい物をリサイクルに出して売ろうとしてるんだ。
国道45号線の北側の住宅密集地域である。

仙台と多賀城を結ぶ準幹線道路を入って行くと、大分近付いていたが、その辺は被害が見当たらないようなのだ。
角を数回曲がって進み家を見つけると、その家だけが甚大な被害ではないか。
瀬戸瓦は無残に壊れ落ちて見る影もない、サッシ戸も壊れがおびただしい。

屋根付き中門も傾斜して瓦も落ちている。
敷地が200坪はあるだろうに、庭には大きな石が幾重にも置かれ、植木も見栄えがしている。
居間の庭先には、御影石のテーブル椅子がデーンと鎮座してる。

建坪100坪くらい2階建て純和風の所謂豪邸という造りなのだ。
床柱も太く豪勢、続き和室の柱も柾目で太い、厚い欄間も彫刻が深い、廊下の腰板は竹を誂えてあった。
「壊すんですか?修理できそうに見えますが・・」思わず口をついた。

彼女は沈んだ声で言う、「ダメですって、耐震が悪くて、修理するにも建てるくらいかかるって言われたの」
「こんなに立派なのに」俺は諦めきれない。
「周りは全然問題なかったのにウチだけ・・構造が弱かったのね」

壊す家なので土足で中に入ってたけど、床の間に2幅の掛軸が虚しく垂れ下がっていた。
お母さんは悔しさと未練が大きいのか、何度も俺に思いを訴えてきた。
彼女がお母さんを諭す、「もうしょうがないんだから・・・諦めるしかないってのに・・・」

数年前に亡くなったお父さんが精込めて造った豪邸は、哀れにも20年で姿を消すのだ。
断水してるのか倉庫の中にはペットボトルと水タンクが置いてある。
倉庫で避難生活か、これもまた淋しい限り・・・