リサイクル親父の日記

第244話 翻訳すると意味が分かるんだ

2011/04/24

店の常連さんである、二三日おきに通って来ている。
頻繁に来るということは、裏を返せば稀にしか買ったりしないことでもある。
60代後半の一人住まいで、友達と二人でいつも出歩いている。

毎日日曜日で時間を持て余しているから、自炊の温泉泊りや釣りなどに精を出していいる。
昼食はほとんどが外で食べるのだ、それが日課であり、合い間に俺の店に寄ったりする。
「今日は何かあるか?いつも何も無いもんな、この店は・・」と憎まれ口を叩く。

彼の本意は「こんにちは、今日も元気かい?俺の好きな物は仕入れたかい、あれば教えてよ」ってな具合になる。
シャイな感じがあり、真正直に言葉にしない、皮肉を交えてわざと嫌みな表現をする。
根は優しいが恥ずかしさをカバーするためにだ。

ある日「今度のアンプ、随分古い型だな、あんなの売れねぇぞ」と昨日買取して陳列したばかりのオーディオを指す。
俺はいつもの様に応える「そうですよね、余程の物好きでないと買わないよね、売れないかもね」
彼は実はオーディオマニアだから、その言い方は、とっても気に入ったから買いたいということを意味してる。

「壊れてんじゃねぇのか、ちゃんと動くのか?」と続ける。
「えぇ大丈夫でした、電源入れますから・・」と俺はカウンターに持って来て作動テストをする。
すると彼は俺を遮り自分でテストを一からやるのだった。

「う~ん、壊れていないな・・・しょうがねぇ、買ってやるよ、又、儲けらるな」と皮肉を込めて言う。
でも彼はやっぱりマニアだし、気に入った物があれば即決する。
カーナビや地デジテレビ、オーディオが得意で、時々は知り合いにも勧めてくれるのだ。

彼の仲間内では尊敬されてるし、仲間のために労を惜しまないというか自身の喜びになっている。
今日午前週に来て「・・自在鉤だっけか?鉄瓶を吊るすやつ、真鍮製で魚が下の方に付いてるんだ、イイ物だよ、買うのか?」
「えぇ、買取できますが、売れ難い物だから安くしか買えないけど、どうして?」と聞いた。

「今度の地震で揺れた時にスピーカーに打つかって、スピーカーのカバーが破れたのよ、だから危なくてしょうがない」
彼には自在鉤は相応しくない代物であり、持っていることが俺には不思議でもある。
趣味でもない自在鉤で大切なオーディオが傷つくなんて彼には耐えられない、可及的速やかに処分すべきだ。

午後一番で彼はガッシャガッシャと自在を持ち込む。
俺の想像以上に良品、棒も太いし、舟と呼ぶ魚も立派で完品でそこそこ時代もあるのだ。
「これは立派な物ですね、イイ品ですよ」滅多にお客さんの前では褒めない俺は、この時は本心を明かした。